『銀河鉄道の夜』は難しい(・Θ・;)アセアセ… [日記]
Lobyが翻訳家であることから、Lobyが日本語を教えている学校(日本語学校)では
翻訳者養成コースというものがあります。
むろん、創設者はLobyです
そして、やはり数年前に学校のホームページも作りました。
学校のホームページ
学校のホームページといっても、今はたくさんすてきなデザインの無料テンプレートがあるから、その中からデザインを選ぶだけなので簡単なんですけどね。コンテンツでは、かなり凝ったので完成するまでに300時間ほどかかりましたけど
このLobyが受け持っている「翻訳コース」、ただ、ふつうのニュースや本などの記事だけを翻訳させても面白くないので、2年ほど前から、文学作品の翻訳をやらせています。
といっても、著作権法(というややこしい問題があることもあって)に触れない作品…
ということになると、『源氏物語』とか『枕草子』など、いやいや、これは文体が古すぎるし、それ自体(作品自体)を理解するのも難しいので、近代ころの作品などから選ぶことにしています。
日本の近代文学作品と言えば、文学に詳しくないLobyがすぐ思い浮かべたのが
MIYAZAWA KENJI(宮沢賢治)の作品。
『注文の多い料理店』とか『グスコーブドリの伝記』とか『銀河鉄道の夜』とか、
ネーミングだけを見ても、翻訳意欲をそそるじゃないですか
学校ホームページには、生徒たちが翻訳した作品が掲載されています
ところがギッチョン、最初の『注文の多い料理店』の翻訳は、それほど難しくはなかったものの、次に取り上げた『グスコーブドリの伝記』はかなり(翻訳が)難しい作品となり、去年から翻訳中の『銀河鉄道の夜』にいたっては…
日本語をかなり理解できると自負する(?)Lobyにでさえ、理解しがたいような描写が作品の中で綴られているんですよね…
たとえば、今月から翻訳がはじまる第9章には、次のような描写があります。
九、ジョバンニの切符(きっぷ)
「もうここらは白鳥区のおしまいです。ごらんなさい。あれが名高いアルビレオの観測所です。」
窓の外の、まるで花火でいっぱいのような、あまの川のまん中に、黒い大きな建物が四棟(むね)ばかり立って、その一つの平屋根の上に、眼(め)もさめるような、青宝玉(サファイア)と黄玉(トパース)の大きな二つのすきとおった球が、輪になってしずかにくるくるとまわっていました。黄いろのがだんだん向うへまわって行って、青い小さいのがこっちへ進んで来、間もなく二つのはじは、重なり合って、きれいな緑いろの両面凸(とつ)レンズのかたちをつくり、それもだんだん、まん中がふくらみ出して、とうとう青いのは、すっかりトパースの正面に来ましたので、緑の中心と黄いろな明るい環(わ)とができました。それがまただんだん横へ外(そ)れて、前のレンズの形を逆に繰(く)り返し、とうとうすっとはなれて、サファイアは向うへめぐり、黄いろのはこっちへ進み、また丁度さっきのような風になりました。銀河の、かたちもなく音もない水にかこまれて、ほんとうにその黒い測候所が、睡(ねむ)っているように、しずかによこたわったのです。 (青空文庫より引用)
頭のなかで想像するだけでも、頭がこんがらってしまいそうな描写でしょう?
そのシーンを想像するだけでもたいへんなのに、さらに『天気輪の柱』なんていう、わけのわからないモノまで出現します。
このナゾの物体(?)について、あちこちのサイトで取り上げられて”解釈”が書かれているくらいの正体不明物なのです。
ナゾの物体と言えば、アーサー・C・クラーク原作、キューブリック監督の映画に出てくるモノリスを想像しますね。
『2001年宇宙の旅』でボウマンが最後に見たのもモノリスだった
『2001年宇宙の旅』も、『銀河鉄道の夜』並みに、後半はわけの分からない作品でしたが、Lobyだったらジョバンニが丘の上で出会った「天気輪の柱」はモノリスであったと想定しますね
モノリスは人類などはるか及ばない(っていうか、彼らが人類を作り上げた?)超高度知能生命体が使っているモノなので、銀河旅行なんて朝飯前にできるのですヨ。
あ、かなり本題から外れてしまいました。
というわけで、たまたまLobyが選んだ日本の文学作品が『銀河鉄道の夜』などというメチャ難しい作品だったため、かわいい「翻訳コース」の生徒たちは四苦八苦して翻訳しています。
『銀河鉄道の夜・第2章”星祭り”』翻訳ページ
Lobyは翻訳家であることは何度も書きましたが、Lobyの翻訳スタイルって、少々(かなり?)変わっているのです。
どこが変わっているかと言うと…
たぶん、普通、翻訳をやる人は、翻訳するオリジナル作品をざっと一読し、作品の”感じ”を掴んでから翻訳にとりかかると思うんですけど、Lobyの場合は、ビジネス翻訳が多かったせいか、逐次翻訳みたいな感じで訳していくのです。
(前もって全体を読まないというのは、無精者というだけ?)
『銀河鉄道の夜』をすでに読まれた人はご存知だと思いますけど、この第9章ってかなり長いんですよね。
全体の半分近くある…
翻訳する生徒たちも驚いているくらいです。
それでも、『銀河鉄道の夜』は名作だし、内容的にも示唆するところが多い。
ということで、作者の紹介と作品の説明文(ブラジル語訳)も入れることにしました。
オドロキモモノキサンショウノキ
Wikiさんで『銀河鉄道の夜』の解説を読んで驚きました。
この作品は、いわば”未完の作品”であり、宮沢賢治の死後に発行されるにあたり、賢治が残した草稿は数回にわたって大きな改稿が行われていたこともあって編集者たちをたいへん悩ませたということ。
たとえば、文圃堂版の『銀河鉄道の夜』発行(1934年)から、読者に親しまれてきた「ブルカニロ博士」は破棄された3次稿の混入とか(*1)、学校の授業や活版所のシーン、友人カムパネルラが川で行方不明になる挿話などは4次稿で追加されたものだとか。 (*博士の登場しない展開が最終形とされたことで物語世界の設定が大きく変わることになった)
ちなみに、Lobyが使っている青空文庫版の『銀河鉄道の夜』は、新潮社1989年発行版を底本としていますが、これにもブルカニロ博士は出てきません。
『銀河鉄道の夜 他十四篇 童話集』 谷川徹三編、岩波書店〈岩波文庫〉1956年版
ということで、『銀河鉄道の夜』は読者にとって内容を理解(ストリー的にはわかるが、シーン、シーンの描写の)するのが難しいだけでなく、編集者にとっても難しい作品だったのですね。
そのことを、最終章を訳すときになって初めて知った…
それが、上に書いた、Lobyの翻訳スタイルのせいなのです
これほど難解だったら、『吾輩は猫である』を選んでいた方がよかったかも?
でも、文学作品を翻訳して学校のホームページに載せるって、苦労ばかりではありません。
作品のシーンにマッチする(あくまでもLobyの想像の世界で)画像をサーチして見つけてページに貼りつけるのは、(時間はかかるけど)とても楽しいものです。
第2章”星祭り”では、『天の川印刷所』という印刷所が出てきますが、これも”古い印刷所”を見つけ、看板を貼って、”天の川印刷所”と看板に書き込みました。
ここでは紹介しませんが、同じくブラジル語に訳した『グスコーブドリの伝記』に出てくる”雑貨屋”。
(グスコーブドリが村の男たちに袋叩きに会うシーンに出てきます)
同作品に出てくる火山の爆破シーン
(白い花の咲き乱れる草原のかなたの火山の爆破シーンです)
苦あれば楽(しみ)あり?
2016-02-21 00:00
あしあと(29)
コメント(7)
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日本人ですが、その日本語はわからない・・・(笑)
難しいですね・・・(^^;
by isoshijimi (2016-02-21 15:22)
自分も分かりません。。。
文章の想像が出来ません。。(^0^)
翻訳作業も大変ですね。。
by なんだかなぁ〜!! 横 濱男 (2016-02-21 18:50)
著作権法は本当に面倒です。
授業で使うだけでも引っかかってくるんですね?
翻訳はその人の作文センスも重要なのでは。
難しいそうだ。
by コンブ (2016-02-23 11:07)
写真撮ってると海外の人を見かける事が多いです、
少しくらいの会話くらいは出来たら良いなと思うこの頃です。
(-_-;)。
by himanaoyaji (2016-02-24 05:43)
翻訳(主にNASA関連)の経験はありますが、言語のみならず、そもそも寄って立つ文化が違うわけですから、どんな文章でも大変です…少なくとも私にとってはそうでした(笑)。ましてや幻想文学は!!
by トモミ (2016-02-24 16:44)
>isoshijimiさん、宮沢賢治の頭って、どんなものだったのかと
思わず考えてしまいます(;'∀')
>なんだかなぁ〜!! 横 濱男さん、日本人でも理解が難しいのですから、
こんなのを日本語を習いたての外国人などが読んだら、まるで暗号を
読んでいるような気になるでしょうね。
>コンブさん、そうですよね~。
やはり翻訳などは注意した方が無難です。
>himanaoyajiさん、年取ってから外国語を覚えるのはたいへんです…
>トモミさん、技術文書などは、宮沢賢治の作品に比べたら簡単だと思います。私も多くの技術関連文書の訳をしてきましたから。
賢治の想像の世界を、外国人がわかるように訳すのは本当にたいへんです(^^;
by Loby (2016-02-25 08:55)
私も日本語を母国語としていますが、
分かりません~。
翻訳は本当に大変ですよね。
by youzi (2016-02-28 20:30)