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内向的人間の時代 [サイエンス]

 スーザン・ケインの『内向的な人が秘めている力』が、今、静かなブームとなっているようです。


中世時代から(いや、古代から?)現代まで、出世するためには外交的でバイタリティーのある人間の方が何かにつけメリットがあると考えられてきました。


弁が達者で快活で行動的な人間は、政治や商談などの交渉においては、”成功をおさめるためには“必要不可欠と考えられ、“黙して多くを語らない人間”は、不向きだと考えられ、領主や雇い主(経営者側)は、そのような人間を求め続けて来て、われわれもそのような”求められる人間”になれるように(天性的にそのような性分をもっているものは別にして)努力をして来ました。


内向的人間



それは、社会のニーズに応えて“自分を変える”というもので、先にも述べたように、生来、その(外交的)傾向をもっているものにはそれほど問題ではないでしょうが、内向的な性格の人間、引っ込み思案な人間にとっては、現状(社会で必要とされる生き方)に適応(自分を変える)ということは大変なことで、中には自殺を考える者がいるほどの苦痛だったのです。
そうまでしないと生きていけない社会、そして現在…


それを、

“そんなに無理して内向的なあなたを変えなくてもいいのよ”

と主張してくれているのがスーザン・ケインなのです。


スーザン・ケインはハーバード大学ロースクール出身。ニューヨークで弁護士として(7年間)働いていましたが、本来、内向的な自分は法律家に向いていないと気づき、作家に転身。そして著したのが、本書『内向的な人が秘めている力』(原題QUIET)です。
執筆にあたってはハーバード大学の学生を含め何百人もの人々に実際に話を聞き、数多くのワークショップにも参加。心理学者や進化生物学者、精神分析医らと議論を交わし、最先端の脳スキャン装置を用いた研究にも立ち会っています。

スーザン・ケイン


彼女のTED2012におけるトークは話題を集め、TEDのサイトで公開された動画は200万ヒットを記録。今年出版された初めての著書『内向的な人が秘めている力』も全米ベストセラーとなっています。

 

 ケインの著書『内向的な人が秘めている力』の日本語版

 


スーザン・ケインによれば、世界の人の実に3分の1、あるいは半数が内向的な性格だそうです。ガンジーも、ルーズベルト大統領も内向的な性格の偉大なる指導者であった。外向性が学校や職場で重視されてきたアメリカ社会では、内向的な人の静かなる声にもっと耳を傾けるべきで、グループでの共同作業ばかりを強制するべきでないと訴えているのです。

社交的で活動的であることが何より評価される文化において、内向的であることは肩身が狭く、恥ずかしいとさえ感じられます。しかしスーザン・ケインはTED2012におけるトークで、内向的な人は世界にものすごい才能と能力をもたらしているのであり、内向性はもっと評価され奨励されてしかるべきだと言っています。 (TED公式ページ

内向的人間1



スーザン・ケインが著書『内向的な人が秘めている力』の中結論づけているのは、“米国社会では外向的な人間が過大評価されている”ということ。米国では小学生から社会人に至るまで、常にグループ活動や社交が奨励され、自己主張が求められており、アイデアや意見が優れているかどうかよりも、プレゼンテーションの上手な者が尊重されている。政治家や弁護士、ウォールストリートのアナリストなどがその好例です。一方、言葉数が少なく自分を主張しない人は、能力が劣っている、さらには精神疾患があるとまで言われているのです。外向的な人間が社会での勝者であり、内向的な人間は敗者だというのが米国の価値観だとスーザンは指摘しています。

 

スーザン・ケインのトーク。日本語の字幕がついています。



以下、スーザン・ケインのトークの要旨です。

“内向性”とは?
“内気”が人の目を気にすることであるのに対して、“内向性”は外的刺激をあまり求めないことです。
外向的な人とは違い、内向的な人には静かな場所が居心地よく感じます。基本的にそうなんです。
で、私たちが自分の能力を発揮するには、それに適した環境が必要なんですが、
残念なことに 学校や職場というのは、外向的な人向けに作られています。
しかも今、偏った考え方が広まっています。
社交的な場からしか何も生まれないという思想。
で学校の教室ですが、私の時代は机が整然と並べられ黙々と学ぶのが基本でしたが、
今は4~7人のグループで机を輪にしてグループワークばかり。
数学からなんと作文まで委員会方式を取るんです。
そして単独行動を取る子は、変わり者か問題児と見なされます。
先生は外向的な子が理想的な生徒だと言います。
内向的な子のほうが成績が良く物知りなのにですよ!
職場も似たようなもので今や開放感あるオフィスが一般的。
周りの雑音や視線が気になる環境です。
また内向的だと管理職になるのが難しい。
でも慎重で無謀なことをする可能性が低い。
ある調査によると彼らのほうが管理職にふさわしいとのこと。
積極的な部下のアイデアを活かして良い結果を出すと。
逆に外向的な上司は仕切り屋になりがちで、部下のアイデアをつぶしてしまう。

世界を変えた偉人にも内向的は人はいました。
E・ルーズベルト、R・パークス、ガンジー、皆、物静かでシャイ。
本当は注目を浴びたくなかった。
それがプラスに働きました。
仕切り屋でも目立ちたがり屋でもない。
正義感の強さが伝わったのです。
私は外向的な人が嫌いではありません。
外向的な親友もいますし、夫だって外向的です。
人間は皆 内向的かつ外向的です。
ユングだって100%内向的な人や100%外向的な人はいないと。
そんな人がいたら精神病院行きだと。
私は内向性と外向性が半々の人が一番恵まれてる気がします。
でも、そんな人は希で、必要なのは、違うタイプの人たちが共存できる社会です。


内向的人間3


新しいものを生み出すのに必要なのは、
心理学者が言うには 創造的な人は積極的に意見交換をし実行力もあるが
同時にとても内向的。
孤独が創造の源泉だからです。
ダーウィンは非社交的でよく独りで森を散歩しました。
ドクター・スースは、書斎に引きこもってたくさんの絵本を描き、
読者に会うのを嫌がりました。
実はネクラだと知ったら子どもたちはガッカリすると。
アップル社の初代PCを開発したS・ウォズニアックは、
子どもの頃引きこもりがちだったのが功を奏したと。
ご存じの通り彼は、S・ジョブズと共同で会社を作ったのですが、
とにかく孤独は息をするのと同じくらい必要なこと。


実際その大切さは大昔から知られていたのに、なぜか今忘れられています。
モーセ、キリスト、釈迦、ムハンマドといった宗教者たちは、
大自然の中で孤独と向き合い啓示を受けた。
そして、その教えを広めました。しかし現代人は孤独を嫌う。


現代心理学によれば、人は、本能的に周りと意見を合わせ、
同じ人に惹(ひ)かれたりもして、しかもそれを自覚していない。
カリスマ的な存在の意見に皆が同調する。

でも話し上手と内容の濃さは、まったく関係ありません。
その人が実は、残念な人の可能性だってあるわけです。
だったら一度集団から距離を置いて自分で色々考えて、
それから皆で意見交換する。
というほうが健全なのでは?

そもそもなぜこんなことに?
なぜ学校や職場をこんな風に?
独りでいるのはなぜ悪いの?
これは文化に根ざした問題です。
欧米、特にアメリカでは、熟考派よりも行動派が好まれてきました。
とはいえ19世紀には、アメリカでも人柄が大事だとされ、清廉潔白な人が好かれました。
そして当時の自己啓発本は、どれも“人柄”がテーマで、
リンカーンのような謙虚な人を手本にすべきだと、
上から目線にならない人。

それが20世紀なると個性が重んじられるように。
農耕社会から産業社会に変わり人々は都市部に移住。
集団の中で自分の能力をアピールすることが必要になり、
魅力やカリスマ性が重要視され始めました。
それを受けて自己啓発本の内容も変化。
優秀なセールスマンを手本にしようと、
これが今の世の中なんです。
私は社交術がムダだとは思いませんし、
チームワークに反対でもありません。
孤独と向き合った宗教家たちも愛や信頼が大事だと。
それに科学や経済などの分野で起きている問題は、
皆が協力しないと解決できません。
でもそこで内向的な人の創造力を活用する。それが得策です。

さて今日の私のスーツケースですが、
中身はやっぱり本。
アトウッドの「キャッツ・アイ」、
クンデラ それからマイモニデス。
実はこれは全部、祖父が好きだった本なんです。
ラビだった祖父は妻に先立たれ、一人暮らしをしていました。
優しく本好きな祖父。私は、子どもの頃よく遊びに行きました。
部屋は本だらけ、テーブルも椅子も本の置き場と化していました。
祖父は読書が何よりも好きでした。
それは礼拝で、62年に渡って語ってきた説教にも表れていました。
本から得た教訓を交えて語ったのです。人気者でした。
でも実は祖父は、すごく控えめで内向的で説教している時に会衆と、
目を合わせるのが苦手でした。
また会話にも消極的でした。相手の時間を奪うのは申し訳ないと。
祖父は94で他界。葬儀には多くの人が集まり、交通規制が敷かれるほどでした。
私は祖父を手本にしています。

7年かけて内向性についての本を書きました。
本当に充実した7年間でした。
読書、執筆、考え事、リサーチ。少し祖父のようになれた。
そして今、私の仕事は、人前で内向性について話すこと。
でも自分の性に合わないことなので正直大変です。
1年間一生懸命、人前で話す練習をしました。
まあホント激動の1年でしたね
それでも私は頑張れる。
なぜなら今ちょうど、内向性に対する世間の見方が、
変わろうとしている。気がするから。

では最後に3つのポイントを紹介します。

その1:グループワークはほどほどに!
  誤解しないでくださいね。
職場が、気軽に意見交換できる雰囲気なのはいいことです。
でも同時にプライバシーや自由、それに自律性も必要なんです。
学校も同じ共同作業だけでなく、自分で色々できるよう。
特に外向的な子に教えるべき、閃(ひらめ)きを得るのは独りの時だから。

その2:釈迦のように大自然の中で悟りを開く。
 山小屋にこもって世捨て人になるということではなく、
 静かに考え事をする時間を増やすということ。

その3:自分の持ち物を確認
 外向的な人、あなたの鞄には何が?
本?それともシャンパングラス?
ぜひ見せてください。皆を楽しませてください。
内向的は人は自分の持ち物をあまり見せたがらないでしょうが、
たまには広げてください。
きっと世の中の役に立ちますから。
ご多幸を祈ります。
静かに話したっていいんですよ。

        (end)


内向的人間2

鉛筆線

スーザン・ケインさんのトークの中で注目すべき個所を下記しました。

 

”学校では、単独行動を取る子は、変わり者か問題児と見られ、
先生は外向的な子が理想的な生徒だと言う”

”職場は開放感あるオフィスが一般的
周りの雑音や視線が気になる環境。
内向的だと管理職になるのが難しい


日本もそっくり同じみたいですね。

しかし、
”(内向的な人間は)慎重で無謀なことをする可能性が低い” 
とメリットを挙げ、
さらに、
”ある調査によると彼らの方が管理職にふさわしく、
積極的な部下のアイデアを活かして良い結果を出す。
逆に外向的な上司は仕切り屋になりがちで、部下のアイデアをつぶしてしまう。

との科学的なデーターに基づいた結果を示しています。

そして、
エレノア・ルーズベルト、ローザ・パークス、ガンジーは、
皆、物静かでシャイ。本当は注目を浴びたくなかった。
仕切り屋でも目立ちたがり屋でもなく、それがプラスに働いた。
正義感の強さが伝わったのです。

偉大な人間の中には、内向的な人が多かったということがわかりますね。
大体、“思慮深い人”というのは、内向的な人が多いと思います…

”人間は皆 内向的かつ外向的です。
ユングだって100%内向的な人や100%外向的な人はいないと言っている。
そんな人がいたら精神病院行きです。
私は内向性と外向性が半々の人が一番恵まれてる気がします。
でも、そんな人は希で、必要なのは、違うタイプの人たちが共存できる社会です。”


このあたりの理論の展開は、以前、ブログで『人間界・動物界の不思議』というテーマで書いた記事の中で、“男性度100%、女性度100%の人間はいない”という事実と似ていますね。


ともあれ、スーザン・ケインのように内向的人間に光を当て、適切な評価をあたえてくれるというのは、Lobyのような内向的人間にとってもうれしいことです。
Lobyも若い頃にセールスマンみたいな仕事をしたことがありますが、やはりイヤでイヤ仕方がなかった。
知らない人と話し、さらにはモノを販売したり、勧誘したりするというのは自分には絶対に向いてないと感じたものです。

そんなLobyも人生経験を重ねるにつれて、人前で話すこともそれほど苦にならなくなり、引っ込み思案な性格も少しは改善したようですが(面の皮が厚くなった?[たらーっ(汗)])、それでもセールスマンなどの仕事は金輪際やりたいとは思いません。

内向的人間であるあなた、またそんな友人、家族をもっているあなた、

もっと自分に自信をもち、周りの内向的人間を評価してあげましょう!

             
いつもご訪問有難うございます♪

 

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コメント 11

Silvermac

確か、テレビでも紹介されていました。
by Silvermac (2013-06-05 06:19) 

駅員3

この方は、まったく存じ上げませんでした。
・・・ちょっと興味がわいてきたので、読んでみたいと思います。
by 駅員3 (2013-06-05 07:18) 

himanaoyaji

内気と内向的、同じだと思ってましたよ。
by himanaoyaji (2013-06-05 08:21) 

なんだかなぁ〜。横 濱男です。

セールスマンなどの仕事、
ノルマが無かったらOKですけどね。
そんなの、無いか。.
by なんだかなぁ〜。横 濱男です。 (2013-06-05 21:47) 

リキマルコ

実は私、人前で話すのがうまくなくてちゃんと伝わらないのじゃないかと思うとなかなか話せないんです・・^^;乗りツッコミはできるのに(笑)
今は少し慣れましたが、それでもカミカミで私ってダメだ・・とおもったりすることもしばしばあります・・。
でもちょと勇気出てきました!これは私の個性ですね(*^^*)
by リキマルコ (2013-06-06 16:44) 

Loby

>Silvermacさん、最近、メデイアで大きく取り上げられているようです。

>駅員3さん、”世の中、価値の無い人間なんていないんだ”、ということを強く感じさせる分析ですね。

>himanaoyajiさん、少々違うようですね。

>なんだかなぁ〜。横 濱男ですさん、あのノルマがたいへんなんですよね…^^; また、ノルマがなかったら、セールスマンも全然商品を売ったりしなかったりして…><

>リキマルコさんは、お仕事柄、人前でおおく話さないといけないのでしょう? たいへんですね^^; やはり内向的なのでしょうね。
 乗りツッコミは、遊び半分で”責任など何もない”から気軽に出来るのでしょうね。


by Loby (2013-06-06 22:32) 

moz

内向的って悪いことではないんですね。
ルーズベルトも、ガンジーも・・・、企業のトップにもそういう人も居るみたいだし・・・。なんだか安心しました。 笑
自分もどちらかといえば内向的? かな? 音楽聴いたり、一人で散歩するのが好きです。 ^^
by moz (2013-06-07 06:34) 

mimimomo

おはようございます^^
嬉しい本ですね~ わたくしもどちらかと言うと内向的ですね。
この本読んでみようかしら。
日本語にも訳されているのかしら。
by mimimomo (2013-06-07 06:41) 

lequiche

この本の内容、今、私にとって非常にタイムリーな内容です。
早速読んでみたいと思います。
by lequiche (2013-06-07 10:03) 

楽しく生きよう

こういう方がたくさんいてくれたらと思います。
by 楽しく生きよう (2013-06-07 19:57) 

Loby

>mozさん、全然悪くありませんよね。
 外交とか交渉とかに向いている人がいる反面、思慮深い人もいるというわけです。 内向的人間もこれからは、自分を卑下したりコンプレックスに落ちる必要はないということですね^^b

>mimimomoさん、おはようございます。
 内向的な人って多いんですよね。
 外向的な人の方が少ないみたいな気がしますね。
 スーザン・ケインさんの本は和訳が出版されていますよ。

>lequicheさん、私にとっても”救世的”(?)な内容でした。
 本もたいへん興味深い内容でしょうね^^b

>楽しく生きようさん、実際、内向的な人間はたくさんいると思いますよ。


by Loby (2013-06-09 10:51) 

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