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回心 [日記]

 ドラマ『いつか陽のあたる場所で』最終回、見ました。

主人公の小森谷 芭子(こもりや はこ)が、母の妙子(浅野温子)に再会したシーンは、涙なくして見れませんでした。

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それまで、頑なに犯罪をおかした娘を受け入れることを拒否し続けていた母が、芭子の友人、綾香の説得によって”自分にも間違っていたところがあった”と気づいて、芭子が住んでいる祖母の家に行き、そこで娘の帰りを待ちます。


やがて帰ってきた芭子に対して言った言葉、”おかえり”は、ふたたび娘を受け入れる母の言葉だったのです。そして芭子が返事した言葉、”ただいま”は、娘がふたたび母の胸に帰ったことを告げる言葉だったのです。

『いつか陽のあたる場所で』は、作家 乃南アサによる小説シリーズ『芭子&綾香』が原作のドラマだそうで、ストリーは、前科持ちという、人には言えぬ過去を持つ小森谷 芭子(上戸彩)と江口 綾香(飯島直子)の2人が東京の下町でひっそりと暮らしながら、過去の重い罪を背負いつつも、強い友情の絆と、周りの優しい人たちにささえられながら、幸せをもとめて一生懸命に生き続ける姿を見せるものとなっています。

芭子(上戸彩)と綾香(飯島直子)の友情の絆
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“家を守る”ために娘を除籍した母
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芭子と綾香が、それぞれ罪をおかした理由は、

芭子の場合は、はじめて好きになった人のために罪を犯した

綾香の場合は、DVをくり返す夫から、幼い息子を守るために夫を殺害

というもので、Loby自身、決してそのような行動(罪)を肯定するものではありませんが、実際に“自分がその立場に置かれたら、おかしかねない...”とつくづく思いました。

“愛は盲目”と昔から言われますが、はたまに理性を狂わせるというのも、また真実です。

また、“母性本能”は、我が子を救うためには、自らの命まで投げ打つ行動に出るのは昔も今も変わっていません。


このドラマ、前科を持った女性が新しい生き方を模索する、というテレビドラマ化するには難しい設定の小説だそうですが、最初、このドラマを見た時は正直いって、“NHKもよくこんなテーマのドラマを作ったな...”と驚いたものでした。

    



犯罪加害者をテーマにした小説と言えば、東野圭吾の『手紙』という作品があります。
これは強盗殺人をおかした兄をもつ弟の心情を綴った作品です。

この小説、日本では発売後一ヶ月でミリオンセラーとなった話題の作品で、Lobyは日本にいる友人からいただきました。東野圭吾の作風は、正直いってあまり好きではありませんが、内容はたいへん濃いものです。“加害者の視点”という、ふだん私たちが想像もできないプリズムから見た世界が描かれています。

ストリーは、懲役15年の実刑で服役中の兄(武島剛志)から、弟(武島直貴)のもとへ月に1度、獄中から手紙が送られます。一方、進学、恋人、就職と、つかもうとした人生の幸福すべてが「強盗殺人犯の弟」というレッテルによって、その手をすり抜けていく直貴。日を追うごとに、兄からの手紙は無視され、捨てられ、やがて…  という展開になるわけですが、先にあげた『いつか日の当たる場所で』で、芭子の母と兄が、家族が“犯罪加害者の親族”という不名誉、世間からの誹謗などから守るために芭子と“縁を切った”のも、この思考から考えると当然とも思えます。


      






犯罪者に関する話題ついでに、最近、ある雑誌で読んだエッセーについてふれたいと思います。

それは、死刑囚歌人 島 秋人(しま あきと)について書かれたものでした。(注:エッセーの著者は、武蔵大学名誉教授 黒澤英典氏)
まったく聞いたことのなかった歌人ですが、1934年に朝鮮で生まれた島 秋人(本名 中村 覚)は、幼少期を満州の恵まれた家庭で育ったが、終戦とともに日本に引き揚げて来たものの、戦争中、警官をしていた父親は公職追放令で職を失い、母親も過労と栄養失調から結核となり死亡。


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極貧の貧しい生活に転落した家庭で、秋人自身も病弱で結核やカリエスになり、小学校でも中学校でも成績は一番ビリ。まわりからはバカにされ、「いじめ」られました。 島自身、後に当時のことを回想して、「僕は小学校5年の時、国語の試験で零点をとり、先生に叱られて足で蹴っ飛ばされたり、棒で殴られたりして苦しまぎれにウソを云って学校を逃げ出したこともある」と語っています。

秋人は仲間から疎んじられ、生活が荒み、転落の人生を歩くことになります。
中学を終えてから、職業を転々とし強盗殺人未遂事件といった罪を重ねるなど非行少年となり、特別少年院に20歳まで収容されていました。 少年院退院後、頭痛が続くことから労働意欲がなくなり、空き家を放火し懲役4年の判決を受けて服役。しかし「ヒステリー性性格異常」と診断され医療刑務所から出所(1958年10月)しましたが、そのまま翌年2月まで精神病院に入院しています。
その後、1959年3月に東京に行って放浪生活に入りましたが、飢えに耐えかねて新潟県の農家に押し入り、農家の主人に重傷を負わせ、奥さんを殺害し、数日後に逮捕され、一審で死刑を宣告され、昭和37年(1962年)に最高裁で死刑が確定します。

こうして、死刑囚として獄中生活を送ることになるわけですが、このような状況の中で、中学の時の美術の先生から「絵はヘタだが構図がいい」とほめられた記憶が忘れられず、獄中からその先生に手紙を出し、その先生から短歌を贈られたことがきっかけとなり、秘められていた「歌」の才能が開花することになり、身も心も浄化されました。

歌人としての秋人は、処刑(1967年)までの7年間に多くの歌を書き、毎日新聞の歌壇に毎週投稿しつづけました。ちなみに、1963年には『毎日歌壇賞』を受賞しています。


「ほめられし ひとつのことの うれしかり いのち愛しむ 夜のおもひに」

たった一度の「ほめ言葉」が、死刑囚の魂の回心をももたらすというエピソード例です。

【回心】(えしん) 漢語として元来,世俗的雑事,私的雑念にとらわれた心を改めて,本来あるべき道に帰向する心をもつようになることを意味する言葉。(コトバンクより引用)


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今日もご訪問有難うございます♪
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あしあと 130

コメント 24

獏

小生の記事にお祝いコメント有難うございました^^)

by 獏 (2013-03-15 07:02) 

isoshijimi

褒めてもらえること、って嬉しいです。
自分も今まで褒めてきてもらった分、ヒトをたくさん褒めたいですね。
でも、おとなになった今でもほめられると嬉しいですけど。
by isoshijimi (2013-03-15 07:03) 

駅員3

残念ながらこのドラマは観ていませんでしたが・・・犯罪の裏側にあるものをしっかり見極めなければいけませんね。
by 駅員3 (2013-03-15 07:51) 

himanaoyaji

すべては出会いから始まる・・・
出会った相手で人生は変わりますからね、 難しいです。
by himanaoyaji (2013-03-15 07:59) 

ryuyokaonhachioj

サギの写真にコメントありがとうございました。
アオサギとシラサギとが何か争ってるようですね。
珍しいですね。
こちら、今朝はちょっと冷えました。今は太陽の日が
差してきました。
by ryuyokaonhachioj (2013-03-15 09:53) 

heroherosr

このドラマ、私も見てました。
芭子ちゃんや綾さんの立場で見れば「もう、許してあげようよ」と思いますが、逆に被害者の立場で見ればそんな風には思わないでしょうし、難しいものですね。
by heroherosr (2013-03-15 10:12) 

SIBA-dog

春が近づいているのにまるで冬のようで「三寒四温」の
繰り返しで体が悲鳴をあげています。(´へ`;)はぁ
犯罪加害者にとっては罪を償うことは勿論ですが、改悟
する心が今の時代は失われているかなと感じています。
by SIBA-dog (2013-03-15 11:52) 

johncomeback

犯罪を肯定するつもりは毛頭ありませんが、
誰もが犯罪者になる可能性はあるんですよね。
by johncomeback (2013-03-15 15:20) 

青い鳥

『いつか陽のあたる場所で』、私も感動しながら観ました。
島 秋人さんの歌、「ほめられし ひとつのことの うれしかり ・・・」
教える立場の人全員の心にとめて欲しいものです。
私も学生一人一人どこかいいところを見つけては褒め、励ましました。
by 青い鳥 (2013-03-15 17:43) 

asty

原作本を読んでいて、ドラマを見たときに「あれ?」と
思い、続けてみました。
本には本の良さがあり、ドラマもまた楽しめました。
涙ですよね~(^^*
by asty (2013-03-15 17:51) 

さうざんバー

このドラマ、重いテーマですが、中心がぶれず、凄く良かったですね(^^)最終回は、家族に厭きられながら、号泣してました(^^;)でも、最後で救われてホント良かったです(^^)v最近NHKはチャレンジドラマが多いですよね(^^)v頑張って欲しいです(^^)v
by さうざんバー (2013-03-15 17:58) 

すーさん

犯罪行為は被害者、犯罪者はもとより
その家族の人生をも根底から覆す
重大なものですね。。
人生の分厚い壁に気づいたら挟まれていて
その先は犯罪を犯す道しか進めなかった場合、、、
悲しいですけど生きる限りその道を
行くしかないわけで、、、
ドラマは観ていませんが
とても難しいテーマを描いているんですね。
by すーさん (2013-03-15 19:45) 

Loby

>獏さん、おめでとうございます。
 これからも楽しいブログを続けてください。

>isoshijimiさん、褒めるって本当に大切ですね。
 欠点を差すことは簡単ですけど、褒めるというのは簡単ではありませんが、褒められた人はそれを心の糧にして大きく成長する人が多いですね。

>駅員3さんはご多忙ですから、TVドラマなど見ているヒマはありませんね。 犯罪を肯定するものではありませんが、その動機や服役後の社会復帰などいろいろと心理学的、社会的に解決すべき大きな問題がありますね。

>ryuyokaonhachiojさん、ああ、アオサギと言うのですか。
 私はてっきり黒サギかと思いました^^;

>heroherosrさんもご覧になっていましたか。
 そうですよね。被害者の立場から見れば、いくら悔い改めたとしても許しがたいものがあるでしょうね。

>SIBA-dogさん、今年は寒暖の差が激しいそうですね。
 体調管理もたいへんだと思いますが、どうぞ風邪など引かれないように気をつけてくださいね。
 罪と罰は古来からのテーマですね...

>johncomebackさん、日記にも書きましたが、状況によっては、望んでいなくとも罪を犯す場合がありますね。 

>青い鳥さんもご覧になっていたのですね。
 最終回はたいへん感動的でしたね。
 島秋人さんの回生のエピソードと歌集、ほんとうに心に響きます。

>astyさん、ドラマも映画も原作(小説)には敵わないと思います。
 映像には映像のよさがあることも確かですが、小説はシーンを想像したりする楽しさもありますし、なにより心理描写が詳しく描かれているのがいいですね。

>さうざんバーさんもご覧になっていたんですね。
 本当によいドラマでした。こういう少々重いテーマのドラマも有益だと思います。 NHKはいろいろ批判もあり、財政もかなり厳しそうですけど、どんどん新しいテーマを取り上げて欲しいですね。

>すーさん、まったくおっしゃるとおりです。
 『手紙』などを読むと、いかに加害者&被害者の家族がたいへんな目にあうかが少しわかる気がします。
 でも、罪は罪。償うべきことはキチンと償わなければなりません。


by Loby (2013-03-15 20:29) 

sadafusa

わたくしもこのドラマ一生懸命みてました。

芭子のキモチ、痛いほどわかります。
罪を犯す犯さないというのは別として、
子供は親に無条件で受け入れられたい、愛されたいと
思うものですよね。

ただ、アメリカへ渡った岩瀬君(斎藤工)はどうしたんだろう、
とちと疑問がアタマをよぎったのですが…。
by sadafusa (2013-03-15 21:09) 

美美

いつか日の当たる場所で・・・
見てましたよ~
by 美美 (2013-03-15 23:02) 

moumou

いつか陽のあたる場所では録画して見ていますよ。
なかなかよくできたドラマだと思います。
by moumou (2013-03-16 00:56) 

Silvermac

世界中で日本のテレビドラマが覧られるのですね。
by Silvermac (2013-03-16 05:40) 

なんだかなぁ〜。横 濱男です。

最近、ドラマを見なくなりましたね。
見ているのは、NHKの朝の連続ドラマだけ。
15分が丁度良いって感じです。
やはり、年なのかな?

by なんだかなぁ〜。横 濱男です。 (2013-03-16 11:39) 

momiji

ドラマ見ました。手紙も映画になりましたかね。
ほめ言葉は自信を回復する良薬ですね(^_^)
by momiji (2013-03-16 14:50) 

moz

罪はとがめて、でも人は責められないと思います。
ドラマ、見ていませんでしたが、奥深そうですね。再放送があれば見てみたいです。 ^^
by moz (2013-03-16 18:52) 

Loby

>sadafusaさん、とても内容の深いドラマでしたね。
 友情、親子の情愛などといったものを考えさせる作品でした。
 芭子の場合は、成人になってからの犯罪ですが、幼少時に親から十分な愛情を受けなかった子どもは非行に走るケースが多いという統計もありますね。 親の愛情は子どもの心の成長には欠かせない”肥料”ですね。
 アメリカへ渡った岩瀬君? さ~ぁ... 小説では戻ってくることになっているのかな?

>美美さんもご覧になったのですね♪
 たいへんいいドラマでしたね。

>moumouさんも見てらしたのですね。
 本当によく出来たドラマでした。

>Silvermacさん、いえいえ、NHKの番組が見れるケーブルテレビを契約しているから見れるのですよ。 普通では見れませんし、ほかの民放TVも見れません。

>なんだかなぁ〜。横 濱男ですさん、朝ドラは短くて見やすいですね。
 ドラマは好き好きですので、見ない方もいますね。

>momijiさん、『手紙』も映画化されたようですが、まだ見ていません。
 どんな映画になったのでしょうね。
 ほめることは誰にとってもたいへん大事なことだと思います。

>mozさん、おっしゃるとおりだと思います。
 かなり見応えのあるドラマでした。ぜひ、再放送してほしいです。


by Loby (2013-03-16 20:26) 

だいず

残念ながらこのドラマは観てなかったのですが、
NHKのドラマ結構面白いですよね。
上海にいる頃はNHK漬けでした(^^)
by だいず (2013-03-16 21:07) 

kuwachan

こんばんは。
最近ドラマをほとんど見なくなりました。
ブラジルでも日本とほとんど同時に見ることができるのですね。
ビックリしました。
by kuwachan (2013-03-17 21:34) 

Loby

>だいずさん、海外で唯一見れる日本語のTV番組は、NHKのだけですからね^^; 日本に帰るとみんな見れるので、少々固い(?)NHKは見ない人が多いようです。

>kuwachanさん、こんばんは。
 ご多忙な方はドラマなど見ている暇ないですよね。
 海外ではケーブルTVを契約すればNHKの番組を視聴することができます♪

by Loby (2013-03-19 08:24) 

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