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ブラジル雑学 その5 北東部の悲しい歴史 [ブラジル雑学]

『ブラジル大好きブログ』に、このようなテーマ(北東部の悲しい歴史)を書くのは少々
気が引けるような感じですが、実情だからやはり書いた方がよいと考えました。 
これは人間にも社会(国)にも当てはまると思いますが、全てが“Maravilha マラヴィーリャ(素晴らしい、素敵))”ではない、ということですね。悪い面も知って、なおそれでも好きになる... それが本当に好き(愛)ということではないでしょうか? あれっ、なんの話をしていたんだっけ?^_^;

さて、それでは今日はブラジルのちょっと良くない面を紹介します。

 ブラジル北東部(以下北東部と述べる)は、アマゾン地域の気候の影響(それは多分にアンデス山脈の気候にも大きく影響されているもの)とブラジル南部からの気候の影響(これはアルゼンチン経由の気候に影響)で、ここ数十年来、毎年旱魃が続いています。
そのため、この数十年というものは、北東部の人たちはサンパウロなどの大都会へ職を見つけ家族を養うために大量に出稼ぎに来ており、それは国内では“内国移民”と呼ばれるほどの社会現象をもたらしています。

 北東部というところは、本や新聞などで読む限り、農地にめぐまれてるところで、適度の雨さえ適時に降れば、ふつうの農業を営む北東人は問題なく自給自足生活ができるところなのですが、悲しいかな、この数十年と続く旱魃で何を植えても育たず、牛やヤギなどを飼っても牧草不足水不足からみんな死んでしまう状態で、ヘタをすると食糧不足から人間まで餓死してしまいます。
ちなみに、ブラジル国内においてもっとも乳児~子供の死亡率が高いのは北東部であり、亡くなった子供たちの死因は“栄養失調”と公表されているが、“栄養失調”とは“餓死”と同じ事なのです。
それほど生活条件の厳しいところで何十代となく住んでいる北東人は、例外なく小柄で痩せた体型をしており、これは厳しい環境条件に人間が適応した結果と見られており、このような北東人は栄養のたっぷりある食事をしても、我々のように肥満することはないそうです。

また、北東部には商工業は極めて少ないため、人々は生活の糧を得るために農業を営んでいるわけですが、ほとんどの農民が年間所得500ドルにも満たない極限状態の中で暮らしており、TVも映画も、極端な場合はラジオさえ持てない生活を余儀なくされる彼等は、そのほとんどが大家族であり、家族計画、避妊さえロクにしない彼等の家族は子供が15人18人という家族はざらです。その子供等も、先に述べた理由で満足な食事をとれず、病気にかかっても薬代もない、医者も病院もない場所であるため、多くが子供の時に死んでてしまうので、結局残るのは10人程度となってしまいますが、それでも貧困農家には育てるのが難しく、結局、満足に学校にも行かせれないで、親同様の貧困農民になるより他に生きる方法がないという悪循環となっています。

 米国のカリフォルニアは、百数十年の昔はブラジル北東部と同じように旱魃が激しい土地だったそうですが、政治家の努力で現在は世界有数の穀物地帯、果実生産地帯となっており、それを可能にしたのは灌漑設備であると言われています。ブラジル北東部の貧しさは、ブラジル帝政時代(17世紀~19世紀)から周知の事実で、時たま為政者は北東部に灌漑施設を計画したり、それらしい工事をやりかけたことがあったらしいのですが、いずれも本格的には実現してなく、北東部の貧しさは残念ながら現在も続いています。 ブラジルが近年、民主政治体制となってからは、心ある政治家は北東部の状況を改善しようと幾度か灌漑計画を立て少しは実施していますが、それさえも肝心の貧農の人々には恩恵を与えず、地方政治家に強力なコネ(政治献金や血族的つながり)のある大農場主や大牧場主などのみが独占し、大農場や大牧場には灌漑パイプが通り、青々とした牧草や作物が茂っているが、周囲にある貧しい農家には一滴の水さえないというところが多いのです。

 ブラジル政府は、この問題を解決しようと常に努力をしていますが、大農場や大牧場の持ち主である地元出身国会議員や地元市長、町長は自分たちの利益を守り増加することのみ専念して、これらの貧農を救うことを考えもしません(すべての政治家がそうという訳ではありませんが、北東部の政治家はほとんどがそうなのです)。 政府が北東部に差し伸べる経済援助や食料なども、その多くがこれらの政治家たちに横取りされ、彼等のいいように使われるだけというから驚いたものです。また、警察もこれらの政治家や地方ボスに都合のよいようにコントロールされているところが多く、摘発をやったり、農民運動を起こそうとする記者や農民リーダーは、雇われガンマン(殺し屋)に脅迫され、ひどい時は殺されてしまうというのが実情なのです。 まるで昔の西部劇のようですが、これは現在でも起こっていることなのです。

ブラジルの市民がもっと政治意識を高め、これらの社会問題を真剣に解決しようと決意しない限
り、北東部の問題は根本的に解決しないのではないでしょうか。 ブラジルにとって最も必要なのは、国民の教育レベルを高めることでしょう。近年の心ある政治家、前大統領のカルドーゾとか今のルーラ大統領(北東部出身で小学校しか出てない民間大統領)は、真摯になってこの問題を解決しようと努力している政治家であり、このような政治家がもっと多く出れば、北東部の問題も近い将来解決されると思います。

          (旱魃の続くブラジル北東部)

  (風光明媚な北東部の海岸地帯は、ブラジルでも有数な観光地域となりつつある)


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