SSブログ

どんでん返し [日記]

 【どんでん返し】とは。意味 1 正反対にひっくり返すこと。話・形勢・立場などが逆転すること。
          「映画の結末に―がある」2 「強盗(がんどう)返し」に同じ。
(国語辞書より)



今回の話題は選挙のどんでん返し。

といっても、若者の間で人気のAKB48[ぴかぴか(新しい)]の選挙の話ではありません

 

48.jpg

 

ブラジルの大統領選挙のお話です。


2014年大統領選挙の有力候補者たち(2ヶ月前)
大統領選挙候補者立ち



ブラジルの大統領選挙なんて、日本の方にはほとんど関係のないことですが、

今年の大統領選挙は当初、予想もしなかった大波乱が起きつつあるのです。

大統領選、有力な候補者は上の写真の3人。


  ジウマ・ルセフ  (現大統領 与党 労働党者候補)

  アエシオ・ネベス 
(野党 社民党候補)

  エドアルド・カンポス
(野党 社会党候補)


で、2ヶ月前、選挙戦がはじまった頃はこんな状況でした。

 



グラフ3

 

さすが現職大統領。



他の候補者を大きく引き離していました。








それが...





先月(8月)13日のこと




然、 3位で選挙戦を戦っていたエドアルド・カンポス候補が乗っていた双発機が墜落し、


 エドアルド候補をふくむ全員6名が事故死してしまったのです

 

エドアルド候補の双発機墜落炎上のニュース写真

EC搭乗機の墜落






急遽、エドアルド氏の代わりにPSB(ブラジル社会党)の大統領候補として立てたのが、



エドアルド氏と正・副としてコンビで副大統領候補として選ばれていたマリナ・シルバ女史。



マリナ氏は元環境大臣であったことから、名前こそ知られているものの、まったくの”未知数”でした。





マリナ・シルバ候補

台風の目






ちなみに、マリナ・シルバ氏とはどんな人間かを見てみると...


出生&経歴

 アマゾンの奥地の小さな町で、天然ゴム採りの父と助産婦である母の間に生まれる。(兄弟は11人)

 幼少時代、アマゾン奥地のジャングルで天然ゴムの樹液を採取する生活を送っていた。

 家族の借金を払うのを手伝うため、10歳の時から天然ゴム採集の仕事を始める。

 15歳の時に母親が病死。死因は住んでいる所の衛生環境が劣悪であり感染症にかかったため。マリナ自身もマラリアの治療を始める。(この時、姉妹二人が感染症で死亡)

 文盲であったマリナは16歳の時にMOBRAL(識字運動)プロジェクトにより、読み書きを習う。

 1980年に結婚。二児の母と成る。(1985年に離婚)

 1981年、22歳でアクレ連邦大学に入学、歴史学を専攻。(この時に後述するマルクス主義への傾倒が始まる)

 その後、ブラジリア大学で心理分析学、さらにアルゼンチンの大学で心理教育学を専攻(2010年)。

 1986年に現在の夫である、ファビオ・ヴァス・デ・リマと結婚。ファビオは農業技師で、当時は天然ゴム採集の技術コンサルタントをしていた。ファビオとの間に2児をもうける。

 16歳で就学し、働きながら州立連邦大で歴史学を学んだ。





シンジケート活動&政界入り


 政界入りしたきっかけは、銃を持った牛の牧場主がシルバ氏のすみかである森林を焼き払ったから。

 アクレ連邦大学で学んでいた時、マルクス主義を知り、共産革命党(PRC)に入党する。

 シンジケート活動を活発に始め、1985年にシーコ・メンデス(Chico Mendes。アマゾンの森林を乱開発から守る活動をした環境保護運動家、労働組合運動家)とともに、CUT(中央統一労働組合)を創設し、副書記長職を1986年まで務める。

 1986年、労働者党(PT)から連邦議員に立候補するが落選。

 1988年、リオ・ブランコ市(アクレ州の州都)市議選に立候補、獲得票トップで当選。で労働者党(PT)から連邦議員に立候補するが落選。同年、環境保護活動の同志であり、個人的な友人でもあったシーコ・メンデスが、農園主の雇った殺し屋に殺害される。

 市議時代、同市議員たちの特権や腐敗を厳しく追求、政敵を多く作るが、市民の間では彼女に対する支持率が上昇する。

 1990年、アクレ州衆議院選に立候補、トップで当選するが、同時期、少女時代に天然ゴム採集の仕事をしていた時に蓄積した重金属による健康障害、リーシュマニア症、肝炎(3回発症)、マラリア(5回発症)などの健康問題があることが判明。

 1994年、アクレ州から上院議員選に立候補し、トップ当選。歴上最年少の上院議員ともなった。上院議員の任期中、環境・開発庁長官を務める(1995~1997)。

 2002年、上院議員選に再選される。

 ルーラ政権下で2003年から2008年まで環境大臣を務める。任期中、連邦政府に対して、地球温暖化対策の一環としての排気ガス規制に関する政府の目標(2020年まで)を明確にすることを提唱する(政府内部からの同種の発言としては最初であった)。マリナ環境大臣の提唱は「気候変動計画」として議会で承認された後、COP15(気候変動枠組条約第15回締約国会議)開催前に大統領により承認される。なお、アマゾンの森林破壊を60パーセント減らしたと言われる。(ソフィーランカスター財団のデータによる)

 2008年、ルーラ政権の開発大臣などとの意見の衝突から環境大臣を辞任し上院議員に復帰。

 2009年、労働者党の政治思想は自分の思想と合わないという理由でから脱党、緑の党へ入党する。


というユニークな経歴の持ち主、というかスゴイ反骨精神と努力と実行力の持ち主です。


ちなみに、2007年に国連はマリナ女史のアマゾンの森林保護への活動に対し、「地球大賞(Champions of the Earth)」を授賞しています。さらに同年、英国の「The Guardian」紙は『地球を救える50人のひとり』としてマリナ氏を選んでいます。




The Guardian紙の『地球を救える50人のひとり』でマリナ女史について記述している部分
Marina Silva

Politician



Marina Silva, 49, is Brazil's environment minister. The daughter of a Brazilian rubber tapper, she spent her childhood collecting rubber from the Amazon forest and demonstrating against the destruction wrought by illegal loggers. In one of the great political journeys, she rose from being illiterate at 16 to become Brazil's youngest senator, and is now the woman most able to prevent the Amazon's wholesale ruin. Under her watch, deforestation has reduced by nearly 75% and millions of square miles of reserves have been given to traditional communities. Last year 1,500 companies were raided and one million cubic metres of illegally felled timber were confiscated. But the future, says Silva, is peril ous. The only way that long-term loss will be averted is with foreign help. "We don't want charity, it's a question of ethics of solidarity," she says

リンク:50 people who could save the planet



 
 
シンジケート活動をしていた頃のマリナ氏(先頭)

MS0.jpg



 議員時代のマリナ氏

MS1.jpg




ジウマ大統領をアエシオ氏が追う形で展開されると思われていた今回の大統領選挙。

第一回目の選挙は10月5日に行われ、この時にどの候補もが過半数を獲得しなければ、

10月26日の決選投票に持ち込まれます。



当初は現職のジウマ大統領ともっとも有力な候補者アエシオ氏の間で決選投票で

勝敗が決せられると思われていたのですが、



しかし...

運命の女神は、時には凡夫には未可解なことをするもの。
 

当初は下馬評にも上がらなかったマリナ氏に運命の女神はウィンクをしたのです。

 


かくして、

草木もマリナになびく... というような状況となりました。




最近のマリナ氏に関するニュースを拾ってみると...


 世論調査会社ダッタフォーリャが発表した最新調査では、10月の大統領選挙の第2ラウンドで、ブラジル社会党(PSB)所属のマリナ・シルバ元環境相の支持率が47%となり、ルセフ大統領の43%を上回るという結果。

 世論調査によると、シルバ氏は現職のルセフ大統領との決選投票に持ち込み、その3週間後に実施される決選投票で勝利するのに十分な票を獲得する勢い

 ブラウン・ブラザース・ハリマン(ロンドン)のストラテジスト、イラン・ソロト氏は、シルバ氏をインドのモディ新首相にたとえ、「当選の確率は5割以上だ。シルバ政権が誕生すれば、市場にとっても、国全体にとっても、非常にプラスだ」との見方を示した。



8月27日に行われた第一回目のテレビ討論会では、マリナ・シルバ元環境相が現職のルセフ大統領をコテンパンに論破し、識者&企業家たちの衆目を浴びることになり、大統領選レースをさらに有利に導く結果となりました。


マリナ候補とジウマ候補が直接対決したテレビ討論会


テレビ討論

 



      8月末では現職のジウマ候補に追いつき...
グラフ2


 ジウマ大統領が、現職の強みを生かせずに苦戦している理由としては、与党(労働者党)の政権下にあるこの12年間、当初は前政権が敷いていた着実な経済成長のレールに乗って高度成長を遂げたものの、以降はブラジル以外のBRICS諸国がリーマン・ショックを乗り越えた後、堅調に経済成長を続けたのに比較し、政府の経済政策の不振、ブラジルコストと呼ばれる複雑な税制、労働・雇用面での過剰な保護措置などに加えて、港湾設備、鉄道網、道路などインフラの不備(投資不足)などもあって、経済はまったく停滞、GDPは横ばい状態。 さらにインフレの再燃の恐れなどマイナス要因ばかり。
それにプラス(マイナス?)して、2005年の「メンサロン汚職事件」、今月(9月)にブラジルの主要週刊誌がスクープした「ペトロブラスお食事券」に代表されるように、労働者党幹部・政府高官による汚職・収賄などの腐敗があとを絶たず、国民は現政権に失望しきっているということが挙げられます。

”マリナ・シルバ氏は柔軟性に欠ける”との不安の声もあるものの、このままでは”台風の目”マリナ氏が大統領になりそうです。

台風の目0

 





usagi_wave.jpg

今日もご訪問有難うございます♪

lobo.gif

usagi_wave.jpg


あしあと(47)  コメント(11)  トラックバック(0) 
共通テーマ:地域

あしあと 47

コメント 11

isoshijimi

これはどうなることか・・・
ブラジルの皆さんも目を離せない選挙戦ですね!
by isoshijimi (2014-09-10 04:07) 

Silvermac

ブラジルも色々大変なようですね。
by Silvermac (2014-09-10 06:52) 

kuwachan

ブラジル国民の皆さん、選挙に興味津々でしょう。
投票率は高いのですか?
by kuwachan (2014-09-10 12:22) 

ヨッシーパパ

だんだん興味が湧いてきました。
by ヨッシーパパ (2014-09-10 18:45) 

ackylacky

 シルバ氏の経歴をみると西部開拓史に出てくる話のようです。
 しかし、どの党も社会主義政党なんですね。私にはどの様な差があるのかよく分りません。
 南米では何故かよく社会主義政権ができますよね。USAに対する反発からでしょうか。
by ackylacky (2014-09-10 20:51) 

Loby

>isoshijimiさん、今回の大統領選はジウマ候補となるか、
 マリナ候補となるか、予想がつきません。

>Silvermacさん、今回の大統領選ほど波乱に富んだ選挙もめずらしいです。

>kuwachanさん、こちらでは投票は義務ですので、関心ある、あらざるに関わらず、国民はすべて投票します。

>ヨッシーパパさん、今回の大統領選は面白くなってきました^^

>ackylackyさん、そうですね。ブラジルでは右派の政党は影を潜めてしましましたね。 ほとんどが社会主義か共産主義を掲げている政党ばかりです。 USAに対する反発ではなく、長い間、資本主義やクーデーター後の軍事政権などに虐げられてきた反動でしょうか?


 
by Loby (2014-09-12 01:57) 

youzi

目が離せない選挙戦になっていますね。
日本だとね、総理は候補者の中か、
この人と選ぶ事ができませんからね。
それにしても、候補者が乗った飛行機が
墜落ってと思いますね。
by youzi (2014-09-12 06:23) 

駅員3

マリナさん、壮絶な人生を送られてきていますね。
ちょっと心配なのは、偏った見方をしないかどうかですね。
一国の指導者ともなれば、俯瞰して物事をみることが大切だと思いますが、いずれにしてもブラジルの輝かしい未来に貢献できる方が大統領になることを祈念しています!!
by 駅員3 (2014-09-12 07:55) 

SIBA-dog

ご無沙汰してます。ブラジルは大統領選の真っ最中なんですね。
W杯のこともありましたから、現政権は苦戦は免れないでしょうね
いずれにしてもマリナ候補は台風の目になるでしょうね。
by SIBA-dog (2014-09-12 13:54) 

トモミ

丁寧な解説、大変よくわかりました。
これは目が離せませんね!!
by トモミ (2014-09-13 15:41) 

Loby

>youziさん、今回の大統領選は予期せぬハプニング続きです。
 決選投票でどちらが当選しても不思議ありません。
 例えはよくありませんが、競馬みたいです^^;

>駅員3さん、本当に敬服する経歴の持ち主です。
 ただ、惜しいのは市長とか州知事とかの経験が皆無なことでしょうか。
 おっしゃるように、大統領は環境保護のことだけを考えるわけにはいきません。なんとか国民にとっても国にとってもよい大統領が選ばれることを祈っています。

>SIBA-dogさん、お久しぶりです。お元気でお過ごしですか?
 W杯でブラジルが敗戦したのもマイナス材料になりました><
 マリナ候補、目が離せない選挙となりそうです。

>トモミさん、私にも勉強になりました。
 本当に目が離せません。


by Loby (2014-09-14 06:10) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

トラックバックの受付は締め切りました

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。