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表現の自由 [最近のニュース]

 世界が注目したブラジルの大統領選、決選投票は野党(社会党)の

アエシオ候補が惜しくも僅差で破れ、ジウマ候補の労働党政権が4期目を継続することになりました。


勝利を祝うジウマ大統領とルーラ元大統領

大統領選勝利
投票日の夜には決選投票の結果が明白となっていました。

午後10時20分台で、開票率99.98パーセント。



当確午後10時20分



最終的には、ジウマ候補が54.501.118票獲得。(得票率51.64%)、アエシオ候補が51.041.155票。(得票率48.36%)でした。
有効票は、ブラジル全国で1億1千682万315票だったそうです。
注目すべきは白紙投票と投票棄権が6.34%に達したということと、なんと21%の有権者(3千137万人)が投票しなかったという事実です。
ブラジルでは投票は義務制であり、以前は正当な理由なしに投票しなかった場合は、かなりの額の罰金が科せられたのですが、最近は罰金額が極端に下がったことと、やはりブラジルでも政治に無関心の人が増えているということでしょう



開票結果発表後、記者会見するアエシオ候補

敗れたアエシオ候補



アエシオ候補の敗北を嘆く支持者たち

アエシオ支持者3



ちなみに、前からこのブログでたびたび紹介していたポーリングデータの予測では、投票日の前日、つまり25日にはこのような結果となっていました


ブラジルの2014年大統領支持予想10月25日



ポーリングデータの予測は100パーセント的中したわけですが、今回はアエシオ候補に勝ち目はなかったわけです。
アエシオ候補は最初の頃(決選投票が決まった頃)はジウマ候補より優勢だったのですが、一次選挙で敗れたマリナ候補同様、労働党陣営のダーティー(ウソとデマゴーグだらけの)な宣伝攻撃の前に敗れた、というのが真相でしょう。

これも前回書いたことですが、ブラジルの選挙史上、今回の大統領選ほどダーティーで低レベルの選挙戦はなかった、とメディアや政治問題専門家などは指摘しています。

これまで3期、12年続いて来た労働党政権も数々の汚職・贈賄事件などを起こしており、その腐敗度は甚だしいものであり、一流の新聞や週刊誌(日本のと違い、ブラジルの週刊誌は一流です)は常に政治を監視し、これらの汚職事件や贈収賄事件などをフォローし、記事にして来ていますが、決選投票を週末に控えた金曜日(10月24日)に発行されたベージャ誌はトップで”メンサロン事件にジウマ大統領とルーラ元大統領(トップの写真の二人です)が関与していた”ことをスクープしました。


現職大統領と元大統領が汚職事件に関与していたことをスクープしたベージャ誌の表紙

彼らは全て知っていた


「メンサロン事件」とは、2005年、政府が議会の支持を取り付けるため、政府広報費等を横領し捻出した資金を使って、議員を買収していたことが発覚、労働党政権を揺るがした大汚職事件。2012年から公判が開始され、事件に関わった政府要人、元与党党首ら有力政治家が有罪とされ刑も確定しています。

決選投票を二日後に控えた労働党政権には大ショックだったようで、土曜夜にブラジル最大の民放TV局グローボで行われたTV討論では、アエシオ候補がこの週刊誌の内容(ジウマ大統領とルーラ元大統領がメンサロン事件に関与していたという記事)に関し、ジウマ候補に対して鋭く迫りましたが、海千山千のジウマ大統領はのらりくらりと回答を避け、反対に週刊誌を名誉毀損で訴えるなどと息巻いていました。


TV討論



おまけに、労働党はこのスクープ記事が載ったベージャ誌表紙の(あらゆるコミュニケーション手段による)PRを差し止めを高等選挙裁判所に求め、裁判所はそれに応じてしまったのです。週刊誌を出版しているアブリール社は即控訴しましたが、これなどは完全なる”表現の自由”の侵害です。
ブラジルの新聞協会や民放テレビ協会、ジャーナリスト協会などは、この口頭選挙裁判所の差し止め判決にこぞって民主主義の基本である表現の自由に対する侵害だと抗議しています。

この問題はこれだけでは収まらず、スクープ記事が載った週刊誌が発売された25日夜、その週刊誌を出版しているアブリールの本社ビル前に労働党のシンパが200人ほど集まり、『ベージャ誌はウソだらけだ!』などと書いたたれ幕を張ったり、社名のプレートにや歩道や車道にペンキで書いたりし、挙句の果ては本社ビル入口をゴミだらけにしてしまいました。



アブリル社



アブリール本社ビルが労働党のシンパに襲撃された事件を報じるニュース動画



労働党のシンパやその支持組織であるシンジケート員などによる、企業襲撃、企業施設破壊行動などは今始まったことではありません。
何年か前にも、あるグロバール企業がブラジルで30年以上もかけて研究を進めてきた農林関係の研究施設が回復不可能な状態に破壊された事件もありました。
それらの過激なシンジケートに資金援助を与えているのも労働党政権などです。(ブラジルでは周知の事実)

さて、ともかくも再選が決まったジウマ大統領の2期目は新年にスタートするのですが、勝利に酔いしれている暇はまったくないようです。選挙戦後半にジウマ候補の支持低下につながった国営石油企業ペトロブラスをめぐる汚職問題は長期化する見通しだし、ブラジル経済は今年前半、リセッション(景気後退)に突入しており、格付け会社も、ジウマ大統領が大胆な歳出カットを実施して財政赤字の縮小を実現できなければ、ソブリン債格下げもありうる、と警告しています。

難題が山積する第二次ジウマ政権です(安倍首相に似ていますね...)が、これらの問題を解決できないとブラジルはBRICsから外れることにもなりかねず、ブラジルのGDPはさらに低下し、インフレ再燃、実質給料低下という悪循環がはじまり、それらは労働党政権の人気低下につながり、次回の大統領選では決定的な敗北を喫するかもしれません。

願わくは、船足が遅くなって止まりつつあるブラジルを沈没させないことです。




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今日もご訪問有難うございます♪

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コメント 12

isoshijimi

選挙では結構汚れたこともあるのですね。
汚職関連もあったのですね・・・。
それでも日本よりはるかに投票率も高くてそこはよいですね。
日本はそのうち誰も支持しない政治家が国を動かすのではないでしょうか・・・。
by isoshijimi (2014-10-28 19:16) 

ackylacky

 ブラジルの大統領選挙の記事は日本の新聞にもでてました。どうも国家という枠組みが世界中で揺らいでいるようです。
 日本では、些細な金額の話で大臣が辞めて行きます。これはこれで政治が機能しない、国民の主権を無視して官僚が政策が決められる状態ですから、あまり楽観できない状態です。
 
by ackylacky (2014-10-28 22:04) 

Silvermac

今度はオリンピックですね。
表現の自由侵害は韓国、中国など沢山ありますね。
by Silvermac (2014-10-28 22:12) 

なんだかなぁ〜!! 横 濱男

ホント、僅差ですね。。
と言うことは、半分は反対者が居る・・・。
ある程度は歩み寄った政治活動も必要かも。。
どっちにしても、国民の利益になる政治をして欲しい物ですね。

by なんだかなぁ〜!! 横 濱男 (2014-10-28 23:02) 

himanaoyaji

政治家と言うか、後援会と言うか、取り巻きの連中と言うか、
お金のため(特に裏金)の人間が多過ぎ・・・
無関心になるのも無理は無いと思いますね。 (^_-)-☆パチッ
by himanaoyaji (2014-10-29 11:18) 

ちゅんちゅんちゅん

こんばんは!
僅差で敗れて 涙するくらいの
政治に対する熱い思いは見習うべきですね☆
日本の投票率の低さは
どうしたものか・・・う~ん・・・
by ちゅんちゅんちゅん (2014-10-29 18:40) 

kuwachan

21%もですか?^ ^
日本は投票率が半分にも満たないことが
よくあるわけで羨ましい限りです。
by kuwachan (2014-10-29 20:26) 

トモミ

ブラジルも結構大変(困難)な状況にあるのですね。日本にいると、自分で興味を持って調べない限り、なかなかブラジルのニュースまでは入って来ないということを痛感しました。
by トモミ (2014-10-29 22:21) 

駅員3

ブラジルは大きな可能性を秘めた国だと思います。
これからのブラジルの発展に期待しています(^^)/
by 駅員3 (2014-10-30 07:22) 

Loby

>isoshijimiさん、政治というのは残念ながら、昔から贈賄や汚職ばかりですね。
 ブラジルの高投票率は、義務制であるところから来ており、これが任意であったなら日本のように半分以下になってしまうかも知れません^^;

>ackylackyさん、NHKでも報道していましたね。
 日本の政治家も昔とあまり変わっていませんね。
 政治家の意識は相変わらず低いというか、金銭感覚が鈍いというか...
 これでは満足な政治もできませんね。

>Silvermacさん、共産主義国や独裁主義国では自由はありませんね。

>なんだかなぁ〜!! 横 濱男さん、21%の投票棄権者などが投票していたら、形勢は逆転していたかも知れません。
 政治無関心は政治家たちの責任でもあります。
 もっとしっかりした、国民のための政治をやってほしいですね。

>himanaoyajiさん、政治家になると、三つのことが見えなくなると言われています。
 一つは「人間」。ごますり人間などに囲まれて人が見えなくなる。
 二つ目は「民衆」。民衆と直に触れ合う機会が減るためです。
 そして三つ目が「金」。政治献金などで大金が入るようになるため。
これらが政治家堕落、民主無視政治の原因ですね。

>ちゅんちゅんちゅんさん、こんばんは!
 まだまだブラジルの若者は政治に対して情熱・関心をもっているものが多いようです。

>kuwachanさん、日本の政治離れは特異な感じがしますね。
 ブラジルは義務制ですので、なんとか歯止めがかかっているかも?

>トモミさん、各国、それぞれに深刻な問題がありますね。
 それでも、日本人は世界の中で稀なほど世界の事情に通じていると思いますよ。
 それはTVニュースや番組などを見てもわかります。

>駅員3さん、可能性の大きな国ですけど、為政者がダメだと冬眠、または沈没してしまう可能性もあります^^;


by Loby (2014-10-30 21:11) 

ちゃーちゃん

こんにちは‼
政界の汚職の問題は何処の国でもあるのですネ・・・最近、日本でも
騒がれて居ます・・・
by ちゃーちゃん (2014-11-04 18:46) 

Loby

>ちゃーちゃんさん、政治家になるとお金(選挙資金?)に執着するあまり、往々にして汚職とかに関わる人が多いですね。
 清廉潔白な政治家を育てるには、英国のように選挙資金額を制限することも考えるべきでしょう。


by Loby (2014-11-04 19:51) 

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