ノンフィクション [ブック]
最近読んだ本といっても、最近のベストセラーではなく昔のベストセラー。
まず、『アラスカ物語』(新田次郎)
極寒の地アラスカとエスキモーとともに運命をともにした、ある日本人の生涯を描いた小説です。
明治時代の初め、日本を離れアラスカにたどり着き、現地の女性と結婚した男がいた。その名はフランク安田。フランク安田は飢餓に苦しむエスキモーのために新天地を築き、「ジャパニーズ・モーゼ」とまで呼ばれた一人の男の物語。
明治元年(1868年)、宮城県石巻町の代々医師を営む家庭の三男として生まれた安田恭輔は十九歳のとき、外航船の船員となり日本を離れた。
外航船の見習船員を経て、米国の農場などで働いたあと、安田(どういうわけかフランクという名前をつけられる)は米国沿岸警備船「ベアー号」のキャビンボーイになった。「ベアー号」はアラスカ北岸などで当時横行していた鯨などの密漁船や密輸船を取り締まることが主な任務だった。
ある冬、この「ベアー号」が氷に閉じ込められたため、その能力から事務長補佐的な役割を果たしていたフランク安田は、不足する食糧の調達のため、100マイル以上離れた北極海に面したポイントバローに一人で向かう。証拠は無かったが船員の一部と結託した悪徳商人が積荷のときに食料を横流ししたために越冬用の食糧が不足したのだ。さまざまな困難に打ち克ち、この任務を無事果たした安田は、人種的偏見の強い「ベアー号」を降り、海岸沿いに村落をもつエスキモーたちといっしょに住むことになった。ここからフランク安田のエスキモーのリーダーとしての活躍が始まる。
興味深いのは、この小説がフランク安田が実在の人物の伝記ということです。新田次郎は、アラスカまで旅行してフランク安田の事跡をたどり、子孫たちを取材し、この伝記小説を仕上げたのです。
日本人であるわれわれには想像もつかないエスキモーたちの生活と風習。そして極端に厳しいアラスカの自然。
そんな環境の中で、持ち前の粘り強さ・誠実さと、環境への適応力、純朴で平和的なエスキモーたちへの愛情から、フランク安田はエスキモーたちのリーダーとして、飢餓のため絶滅に瀕したエスキモーたちを新天地へと導くことを計画し、数人の仲間と新天地探索の旅に出るが、その途上、フランク安田は、アラスカの山岳地帯で大金鉱を発見。それから物語は予想もしない展開を見せます... (以上、本の虫クラブを参照にさせていただきました)
新田次郎氏
四季がある日本から、太陽がある季節(夏)とない季節(冬)しかないアラスカで生活することになったフランク安田はかなり大きな戸惑いを感じます。この小説の中で言われる“沈まない太陽”ということば、アル・パチーノ主演の『インソムニア』を思い出します。
とにかく、たいへん読み応えのある小説で、フランク安田の生涯を伝記という形で世に出してくれた新田次郎氏に感謝します。新田次郎氏の作品は、映画『八甲田山死の彷徨』しか知らなかったのですが、Wikiによれば、新田氏の小説は大変に緻密で、小説構成表(年表のように縦軸と横軸を設定し人物の流れを時系列に当てはめたもの)を先に作成してから執筆に取り掛かった、とありますが、この『アラスカ物語』も、その新田氏の作風を見事に結晶化した作品の一つと言えるでしょう。
次は、柳田邦男の『マリコ』
柳田邦男氏の作品も読んだことがありませんでした。なんせ、以前は違ったジャンルの小説ばかり読んでいた(決して推理小説ではありません)ので、新田次郎にせよ、柳田邦男にせよ、名前は知っていたけど読む気はなかったのです。まあ、柳田邦男の場合、ノンフィクションの作品ばかりなので、若い頃はあまり興味なかったのかも。
この暗号が頻繁に使われた時期は、ナチスドイツと連合国の間に戦争が開始されて2年経ち、ヨーロッパの全域で戦争が展開されていた頃だった。そして日米両国関係も、戦争か平和かというぎりぎりの瀬戸際に立たされていた。
そんな中、ワシントンの日本大使館と東京の外務省の間で、頻繁に電話や電報が交わされ、その連絡の中で「マリコ」という暗号が使われたのだ。このキーワードは、日本側の交渉方針や提案に対する米側の態度についての情報を連絡する時に使われたのだ...」
左から、マリ子、グエン、寺崎秀成氏、
この小説の中で出てくる「マリコ」とは、実は太平洋戦争直前までワシントンの日本大使館に勤務していた、寺崎秀成氏と彼の妻であるアメリカ人女性グエン・テラサキさんの一粒種の美少女マリ子さんのことですが、当時としては(外交官としても)めずらしい国際結婚をした外交官寺崎氏とその一家(グエンとマリコ)が、日米開戦直後に日本に引き上げ、“鬼畜米英”という米英国人敵視政策をとっていた日本の国内で、筆舌に尽くしがたいような差別や苦境に直面することになったグエンとマリコたちだけど、決して卑屈にならず、常に希望を持ち続け、運良く(としか言えません)終戦まで生き延びることができます。その後、マリコの勉学のために米国にふたたび帰国するわけですが、米国でも小説化され、映画化(注:柳田邦男の小説とはまったく別のラブストリー)までされたグエンとマリコの数奇な半生は、柳田邦男氏独特のドキュメンタリータッチの文章のせいもあって、ページをめくるのももどかしいほど読むものを熱中させます。
残念ながら、『マリコ』は廃刊となっているようでAmazonにも新刊はありません。
ご紹介の2冊の本は、大変興味があります。機会があれば、是非読んでみたいと思います。
by Silvermac (2013-11-12 05:40)
いずれも感動的で素晴らしい作品ですね。
改めて読みたくなりました。
by 駅員3 (2013-11-12 07:00)
『アラスカ物語』是非読んでみたいです。
星野道夫さんの写真が好きで、アラスカはいつか行ってみたい国なんです。
by ちょんまげ侍金四郎 (2013-11-12 08:22)
マリコはテレビでドラマ化され(確かNHK)、
それを見た記憶があります。
by kuwachan (2013-11-12 13:06)
こんにちは!
こちらは この冬一番の寒さになりました
新田次郎さんの小説は 山が好きだった私は 何冊か読んだことがありましたが ブログを拝見し 再度読んでみたくなりました
by きんれん花 (2013-11-12 14:02)
新田次郎の小説よく読みましたよ。
山の小説の方ですけどね。.
by なんだかなぁ〜!! 横 濱男 (2013-11-12 20:45)
>Silvermacさん、図書館などで借りてでも、ぜひ読まれることを
お勧めします。大変感動的なノンフィクション小説です。
>駅員3さん、ぜひ読まれることをお勧めします。
大変感動的なノンフィクション小説です。
>ちょんまげ侍金四郎さん、たいへん素晴らしい作品です。
ぜひ読まれることをお勧めします。
星野道夫さんはアラスカの写真をたくさん撮られているのですね。
>kuwachanさん、『マリコ』はTVドラマ化されていたのですか。
知りませんでした。柳田邦夫氏の小説もとても素晴らしいですよ。
>きんれん花さんは、新田次郎氏の小説を読んだことがあるのですね。
アラスカ物語はたいへん感動的な小説ですね。
> なんだかなぁ〜!! 横 濱男さんも新田次郎氏の作品を読まれたことがあるのですね。アラスカ物語はすばらしい出来の伝奇小説です。
by Loby (2013-11-12 21:38)
あれ!昨日のコメントうまくいかなかったようですので、改めて。
アラスカ物語は、母が読んだ事があって内容を少し聞いたことがあります。オーロラの話だったと記憶がありますが、綺麗というより恐ろしいものだったとか。
歴史の中に、新天地に移動してきて国が始まったということがよくあるので、興味のある話です。図書館へ行って借りようかな。
by ackylacky (2013-11-13 08:02)
ご無沙汰しています。帰って来ました。
極寒の地の話は、それだけでもう大変そう!
最近、読書の時間がとれませんが、子どもたちのアルバムのタイトルに託したように、私も今という時、この瞬間にしか出来ない事を存分に楽しもうと思います^^
by kyon (2013-11-13 16:53)
kuwachan様と同じでNHKのテレビドラマとして観ました。
大変すばらしい出来で感動したことをよく覚えています。
アラスカ物語、ずっと以前に読みました。
by 青い鳥 (2013-11-14 23:24)
>ackylackyさん、二度目のコメント、有難うございます。
アラスカ物語は、アラスカでエスキモーたちと生きた日本人の物語です。
たいへん感動的な作品です。ぜひご一読することをお勧めします。
>kyonさん、お帰りなさい。
アラスカの極寒はシベリアのそれに匹敵するものでしょうね。
また、極地であることから季節の変化も特徴的なものがあり、適応するのもたいへんだと思います。
kyonさんは、ずーっと若い人たちのスポーツを追い続けていますが、
これもとても大事な青春の記録を残されていることで重要なことだと思います。
>青い鳥さん、NHKで昔、ドラマ化されたのですね。
原作が素晴らしいものだけに、ドラマも同様に感動的なものだったでしょう。
by Loby (2013-11-15 04:50)