スパルタカス-ドラマと真実 [映画&ビデオ]
ドラマ スパルタクス
『スパルタカス』-テレビドラマ版をDVDで見ました。
『スパルタカス』といえば、スパルタカスは スタンリー・キューブリック監督によって映画化された劇場版『スパルタカス』(1960年 主演:カーク・ダグラス)が有名です。Lobyも最初はリメイク作品かと思っていたら、まったく違う感じの作品でした。
テレビドラマ版『スパルタカス 第1章』(原題:スパルタカス: アリーナの王者)は、テルモピュライの戦いを描いた『300〈スリーハンドレッド〉』(2007年)、『グラジエーター』(2000年)、それに『カリギュラ』(1980年)をミックスしたようなドラマです。
バティアトゥスの妻ルクレティア
Lobyが今回見たのは、第1シーズンで、「スパルタクスの反乱」前夜を描いたものです。
スパルタカスと言えば、ローマの奴隷であった剣闘士が、のちに第三次奴隷戦争と呼ばれた反乱を起こして、結局はローマ軍に鎮圧され、数千人の捕虜が街道沿いに磔にされた、くらいの知識しかありませんでしたが、このドラマはスパルタカスという実在の人物と、歴史上に残ったローマの奴隷たちの反乱という事実を取り入れたほかは、すべてフィクションと考えて見たほうがいいような内容です。
剣闘士の指導官ドクトーレ(ピーター・メンサー)
あらすじ
主人公、トラキア人のスパルタカス(アンディ・ホイットフィールド)は、ゲタイ人の討伐を誓うローマ軍と条約を交わし作戦に参加する。しかし野心旺盛なローマ軍の副将グラベル(グレイグ・パーカー)は自らの巧名心のため、条約の内容である作戦を変更する。それによりゲタイ人の報復が生まれ故郷に襲撃に来ると危険を感じたスパルタカスらは、グラベルの命令に反旗を翻し、逃亡して故郷に戻る。そこで彼が見たものはゲダイ人によって廃墟と化した村だった。グラベルに捕われた妻スーラ(エリン・カミングズ)を救うためにローマへ処刑されるために連行されて行く。副将グラベルが考えた処刑法は闘技場で4人の剣闘士を相手に勝ち目のない戦いをすることだったが、スパルタカスは見事に勝利し、生き残ることができる。その“戦いぶり”をみたラニスタ(興行師)バティアトゥス (ジョン・ハナ)は、副将グラベルからスパルタクスを買取り、剣闘士として育成することとし、この時からスパルタクスは剣闘士として、壮絶な戦いに日々に身を投じていくこととなる(Wikipediaより引用) 。
先に挙げた『グラジエーター』や『300〈スリーハンドレッド〉』の決闘シーンをコピーしたような壮絶なアクションと残酷なシーン、そして血・血・血…
そして『カリギュラ』をも凌ぐような未成年者には聴視禁止シーンが、ほとんど毎回(全部で13章)出てきます。 米国ではペイチャンネルで第一話から400万人が視聴し、回を重ねるごとに視聴者数が増えるという大ヒット作品となったそうですが、米国あたりの視聴者の感覚って日本人のそれとかなり差がある感じですね。
もっとも、あの時代のローマでは、庶民の間ではどうだったかは知りませんが、貴族の間ではセ◯クスはかなり奔放というか、開放的(?)であり、カリギュラのように妹としたり、男性同士や女性同士でのことも”普通”と見られていたようで、倫理観が現在とはまったく違うことがわかります。
また、地位獲得や権力争いなどの争いで暗殺、毒殺などが常に行われていましたが、これもローマだけに限ったことではなく、戦国時代の日本でも、中国でも頻繁に見られ、つい最近ニュースになった古代エジプトのラムゼース3世王の死因は喉を切られたことだと指摘されていますので、ローマ人が特別に残虐だった、というわけでもなさそうです。
同時代のローマを取り上げたテレビドラマには、『ローマ』(Rome)が、あります。こちらはローマ軍の百人隊長(ヴォレヌス)を中心として、内乱期のローマ共和国が描かれており、剣闘士(奴隷)の視点から描かれている『スパルタクス』とは当然視点が違います。しかし、ドラマであるため、細部のストーリーは史実とは異なるというところでは『スパルタクス』とあまり変わらないようです。
しかし、Lobyが見た限りでは『ローマ』は『スパルタクス』には足元にもおよばないと思います。もっとも、『ローマ』の方は米国のHBOとイギリスのBBCが共同制作したものであるだけに、『スパルタクス』のような残酷なシーンやセ◯クスシーンなどは入れるわけにはいきませんが、その分、ファミリーで(といっても両作品ともR15ですが)楽しめるドラマ仕上げになっているようです。
以下、ざっと歴史上のスパルタクスとその反乱につい見てみます。
歴史上のスパルタクス
スパルタクスとは?
スパルタカスの出自については、正確なところはまだ分かってないようで諸説がありますが、“もっともらしい”(?)説を紹介すると…
19世紀のドイツの歴史家モムゼンは、ボスポラス王国のスパルトキダイ家にスパルタクスと類似した名前が存在することから王族の子孫であるとする説を唱え、ドイツの歴史学者ツィーグラーもその資質から、指導者階級の出で騎士的伝統を身につけていたと推測した。この説に対してはローマを苦しめた指導者が卑賤な出身であって欲しくないという心情がら出たもので、名前が似ているだけで論証がなにもないとの批判もある。
スパルタクスの生年についても不明だが、研究者たちはその指導力や行動から反乱を起こした時には35歳から40歳程度であったと推測している。一方で、当時の剣闘士は20代前半がほとんどで30代になるまでに木剣拝受者(自由の身)となって引退するか闘技場で死んでいるので、スパルタクスも20代の青年であったとする見方もある。
スパルタクスが生まれたとされるトラキア地方。黄色の太線はロドピ山脈。
また、プルタルコスはスパルタクスと同族の女予言者の話を伝えており、ディオニューソスの秘儀によって霊感を受けた彼女は、スパルタクスが偉大な恐るべき勢力となるが、やがては不幸な結末を迎えると予言したという。この女予言者は蜂起開始の際にスパルタクスと同じ建物にいて、いっしょに剣闘士養成所を脱走しており、現代の研究者の中にはこの女性は実在し、スパルタクスの妻であったと主張する者もいる。
スパルタクスが引き起こした反乱とは?
通称、第三次奴隷戦争(紀元前73~71年)と呼ばれるもので、紀元前73年から紀元前71年にかけて共和政ローマ期にイタリア半島で起きた剣闘士・奴隷による反乱。3度の奴隷戦争の中で最大規模のものであった。反乱軍側の指導者スパルタクスの名にちなんでスパルタクスの反乱と呼ばれることが多い。
紀元前73年に、カプアの養成所を脱走したおよそ70人の剣闘士奴隷の集団は、スパルタクスを指導者とする男性、女性そして子どもを含む約12万人の反乱軍に膨れ上がり、イタリア各地を放浪し、襲撃した。この奴隷集団は驚くべき戦闘力を発揮し、差し向けられた地方の討伐隊、ローマ軍の民兵そして執政官の率いる軍団をことごとく撃退した。
ローマーの元老院は最初に法務官であり副将であったグラベル(ドラマにも出てくる)、次いでウァリニウスを討伐に派遣するが、スパルタクスはこれを相次いで撃退した。数万人に膨れ上がった反乱軍は南イタリアの幾つかの都市を略奪・占領して冬を越し、紀元前72年に北上を開始した。プルタルコスはアルプスを越えて奴隷たちを故郷へ帰すことが反乱軍の目的であったとし、一方、アッピアヌス(2世紀の古代ローマの歴史家)やフロルス(同じ2世紀の歴史家)はローマへの進軍が彼らの目的であったとしている。
同年、2人の執政官レントゥルスとゲッリウスが率いる正規のローマ軍団が派遣され、クリクスス(この人もドラマに出てきます)の率いる別動隊3万人は殲滅され、クリクススも戦死する。スパルタクスはこれら2人の率いるローマ軍団を撃破した。スパルタクスは戦死したクリクススの霊を弔うためにローマ兵の捕虜300人に剣闘士試合をさせ犠牲に捧げた。スパルタクスの率いる反乱軍は北イタリアに到達したが、何らかの理由によって彼らはアルプス越えを行わず、軍を反転させて再び南イタリアへと向かった。
反乱の終わりとスパルタクスの死
ローマ元老院はイタリア本土で起こった抑止しえない反乱に恐れをなし、反乱鎮圧の任をクラッススに命令した。
最高司令官クラッススは正規軍8個軍団(4万~5万人)を動員するとともに、十分の一刑と呼ばれる厳しい規律を軍団に課し、反乱軍との闘いに臨んだ。アッピアヌスは前執政官の2個軍団の指揮権をクラッススが引き継いだ際に彼らの臆病を責めてこの刑を科したのか、その後の敗戦の際に全軍団に対して科したのか明らかにしていないが、4千人以上の軍団兵が処刑されたとしている。
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戦争の潮目が変わり始めた。クラッススの軍団は幾つかの戦闘で勝利して数千人の反乱奴隷を殺し、スパルタクスを南へと後退させ、イタリア半島最南端のカラブリア地方の都市レギウム(現在のレッジョ・ディ・カラブリア)にまで追い込んだ。プルタルコスによれば、スパルタクスはキリキア海賊と2千人の兵士をシチリア島へ運ぶ取引を行い、この地で再び奴隷の反乱を起こさせ増援を得ることを計画したと云う。だが、海賊たちはスパルタクスを裏切り、報酬は支払われたにもかかわらず、彼らを見捨てて船を送らなかった。幾つかの史料によれば、反乱奴隷は脱出のための筏を造ろうとしたが、クラッススは何らかの手段によってこれを妨害して海峡を越えさせなかったため、反乱奴隷たちは諦めたと云われている。
スパルタクスの軍はレギウムへと退却し、クラッススの軍団はこれを追撃し、地峡にまたがる長城を建設し始め、阻止しようとする反乱奴隷の襲撃を撃退して完成させた。反乱軍は包囲され、補給を絶たれた。
この頃、ヒスパニアでのセルトリウスの反乱を鎮圧したポンペイウスがイタリアに帰還したが、すぐさま反乱鎮圧増援軍として出発することを命じられる。元老院はさらに、第三次ミトリダテス戦争を戦っていたルクッルスも増援に向かうよう命じた。
ポンペイウスの軍団が南下し、ルクッルスの軍団もブルンディジウムに上陸すると、クラッススは迅速に反乱を鎮圧せねば勝利の栄誉は増援軍の将軍たちのものになりかねないと焦り、軍団兵たちに早急に反乱を終わらせるよう駆り立てた。
ポンペイウスの接近を知ったスパルタクスはローマ軍の増援部隊が到着する前に戦いを終わらせようとクラッススとの交渉を試みたが失敗し、ついに最後の戦いを迎えることとなった。
最後の戦場は『シラルス川の戦い』と呼ばれ、ローマー軍(約3万2千人)対反乱軍(約5万人)は壮絶な激戦を繰り広げたが、反乱軍はついに殲滅させられ、大部分の者たちが戦場に斃れた。この戦いでスパルタクスも戦死したが、彼の死体は見つからなかった。
反乱軍のうち、6千人がクラッススに捕えられ、ローマからカプアに至るアッピア街道沿いに見せしめのため十字架に磔にされた(以上、Wikipedia参照)。
1世紀の文人プリニウスは、ローマ社会の退廃を嘆く文章の中でスパルタクスが軍中の金銀の私有を禁じた話を想起して「逃亡奴隷にして、その心情の偉大さに顔色なからしむる」と述べたと言われています。
アッピアヌスは反乱軍の軍紀が厳正であったことを伝えており、スパルタクスは略奪品を平等に分配し、金銀の個人的な所有を禁じていた。
また、サッルスティウス(紀元前1世紀のローマの政治家・歴史家)に拠れば、スパルタクスは無用な暴行と略奪といった逸脱行為を禁じたといいます。
ローマ貴族フロンティヌスは著作の『戦術論』でスパルタクスを窮乏と困難に耐える人物で、その戦術は彼の知る全ての将軍に勝るとまで高評価しています。
これらの評価から伺えるのは、スパルタクスはかなり高貴な心の持ち主だったということです。
馬術にも長け、戦術家としても優れ、リーダーとしての資質をもち高潔な人であったということを見ると、歴史家モムゼンが推察したように、もしかしたら、ボスポラス国の王族の子孫であった可能性もあると考えられますね。
さて、最後にローマによって鎮圧されてしまった『スパルタカスの反乱』は、その後、ローマにどのような影響をあたえたのでしょうか。
Wikiによれば、奴隷に対するローマ人の態度やローマ社会の奴隷制度自体に対する第三次奴隷戦争の影響を推し量ることは簡単ではない。確かに、この反乱はローマ人を萎縮させ、ふたたび起こるかも知れない反乱の恐怖により、彼らは奴隷たちを以前よりは過酷に扱わなくなった。
ローマ人奴隷所有者層の中には、これまで通りの収奪一辺倒では危険であると考え、監督を強化する一方で、労働意欲を増させるために奴隷に財産の一部(ペクリウム)をあたえ、妻帯を許して家族を構成させる動きまでが出るようになった。
裕福なラティフンディウム(大土地経営)の所有者たちは農業奴隷の人数を減らし、膨大な人数がいる土地を失った自由民と小作契約を結ぶようにした。さらに紀元前52年にカエサルのガリア戦争が終結したことにより、ローマによる大規模な征服戦争はトラヤヌス帝(在位98年 - 117年)まで後を絶つことになり、軍事的征服を通じた安価の奴隷労働力の大量供給も終わってしまった。比較的に平和な時代には大農場における自由民の雇用がより一層に促されることになった(コロヌス化)。奴隷たちにも財産を蓄えて自由を得て、コロヌス(小作農)になる道が開かれるようになったのである。
と、このように残った奴隷たちに労働環境の改善、そして自由へと向かえる道をスパルタカスたちは開いたことになります。つまり、スパルタカス(とその反乱軍)の死は無駄死ではなかったのです。
ドラマで知るスパルタカスは、ラッセル・クロウが演じたような血も涙もないような”復讐の鬼” 剣闘士のように描かれていますが、Wikipediaなどで勉強してその歴史を知ったあとでは認識がまったく変わりました。
ドラマ第一章に出てくる美女たちの中で、もっとも美しいメリッタ役のマリーサ・ラミレスの画像です♪
ギリシア・ローマ時代の映画やドラマは大好きなので
これもぜひ鑑賞したいですね~☆
西洋の時代劇といったところなんでしょうか???
by 獏 (2012-12-21 08:34)
スリーハンドレッドはDVDで観たのですがいやーすごい迫力でいたねえ。ああいう風に育てられると強くなるでしょう。
現代人はまだまだ甘いかなあ。
by moumou (2012-12-21 12:30)
(⌒∇⌒)ノ"こんにちは~♪
スパルタクスというバレエ作品もあるんですよw
あらすじありがとうございます。
わかりやすい♪
by つなみ (2012-12-21 14:47)
絵に描いたような女性のプロポーションだけで満足です。エッ?
ではまた、ありがとうございました。
by PopLife (2012-12-21 17:35)
>獏さん、戦国時代の中国の歴史や小説も面白いですけど、古代ローマの歴史や関連作品も結構面白いですね。
スパルタクスは、奴隷の反乱の物語ですから、いわば水滸伝みたいなものでしょうか。 内容はなかり違いますけど。
>moumouさん、スリーハンドレッドは、とくに戦いのシーンが壮絶でしたね。 現在でもスパルタ教育という言葉が残っているくらいですから、想像を絶する最強兵士教育法だったのでしょうね。
>つなみさん、そうですね。私は紹介しませんでしたけど、劇やバレエもあるようです。 歴史はつねに興味深いですね♪
>PopLifeさん、あはは。最後のおまけでご満悦していただいただけでも嬉しいです♪
by Loby (2012-12-21 19:37)
これ面白そうですね、お正月はつまらないテレビ番組ばかりですから、借りて観ようかしら。
by heroherosr (2012-12-21 20:13)
こんばんは、
面白そうです(^_^)
所変われば品変わるで、価値観も現代とはぜんぜん違うということなんですね。
by Azumino_Kaku (2012-12-22 01:08)
昔のスパルタカスを見た記憶があります。主演の俳優の名前がすぐ出てこない歳です。解説を楽しく読ませて頂きました。
by JUNKO (2012-12-22 09:04)
>heroherosrさん、ストリーとしてはかなり面白いドラマです。
面白くもない正月番組を見るくらいなら、これを見た方が得します。
>Azumino_Kakuさん、こんばんは。
スパルタクスの歴史を見ただけでもかなり面白いので、ドラマは私もまだ第一章しか見ていませんが、これから(第二章)さらに面白くなると思います。
価値観は現代と比べるのがおかしくなるほど違いますね。
>JUNKOさん、私もカーク・ダグラス主演の映画をTVで見たことがありますが、あまり記憶には残っていません。ローマ軍を相手に戦った反乱軍の首領くらいです…^^; 今回、ドラマに関してあらためて勉強し、かなり興味深いものだと知りました。
by Loby (2012-12-22 21:08)
この時代の映画は、強靱な肉体とパワーに圧倒されますね。
ぶっ飛ばす。。感覚ですね。
お正月は、自分もDVD見ます。。
TV番組つまらないですからね。
by なんだかなぁ〜。横 濱男です。 (2012-12-24 16:42)
>なんだかなぁ〜。横 濱男ですさん、本当に圧倒されますね。
それだけ激しい時代だったということでしょう。
たしかに、お正月はつまらない番組を見るより、いい映画をDVDで見たほうがよさそうです^^b
by Loby (2012-12-24 21:50)