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誰もがもっているネアンデルタール人の遺伝子 [サイエンス]

  昨日から、TVや新聞では米国の科学者たちが最近のゲノムを人工的に合成したというニュース(関連記事)でもちきりですが、この特筆すべき成果をあげたのはクレイグ・ベンター研究所(メリーランド州)の科学者チームですが、この合成技術について、さまざまな面で工業的な応用が考えられる反面、一旦悪用されれば合成技術を使って強力な病原菌が開発され、テロに悪用される危険とか自然界にない生命体が実験室から逃げ出すリスクなどについて喧々諤々の議論が巻き起こりつつあります。

米国の科学者たちが合成したゲノムが埋め込まれた細菌細胞 genoma.jpg



まあ、この種の発見は、原子力利用やレザー光線と同じで使うもの次第で善用にも悪用にも使われるので、やはりきちんとした管理などが必要となってくるわけですが、今回の人口ゲノム関連ニュースを見てすぐ思い出したのが、1952年に米国の化学者S・L・ミラーがアミノ酸を合成した有名な実験です。(資料:生命の誕生関連サイト)

アミノ酸の分子モデル

glycine.jpg


まあ、私自身はこの実験のことをずっとあとになって(学生時代に)知ったわけですが、ミラーがアミノ酸の合成に成功した時も、いかにもこれで生命発生の謎が解明できるみたいな期待が世界中にあったわけですが、生命発生の謎なんて人間のゲノム解析ができる現在でもほとんど分かってないというのが真実です。生命の謎は我々が考えている以上に奥深く神秘なものなのですね。




さて、話変わって、今月はじめに『現代人類にもネアンデルタール人の遺伝子』というニュースが報道されましたね。現代人にネアンデルタール人の血が流れているという可能性については先般、このブログでも紹介しましたが、前回、この学説を唱えていると書いたマックス・プランク研究所(ドイツ)がヨーロッパのほかの学術機関の協力を得て進めていた研究がこのたびサイエンス誌に発表することになりました。


それによると、直系アフリカ系現代人を除く現代人には、1パーセントから4パーセントのネアンデルタール人の遺伝子があるそうです。
これは5万年から10万年前にアフリカを出た現代人の祖先たちがヨーロッパ大陸で先住民であったネアンデルタール人と遭遇し、交配した結果(研究者の間では現代人の先祖とネアンデルタール人は約1万年間共生したと推定されている)ネアンデルタール人の遺伝子を受け継いだということで、この4年以上にわたる研究の成果に世界中の人類遺伝子研究者たちが驚いているそうです。それは、遺伝子学上は”異種間交配は原則的に子孫を残せない”からなのですが、この問題をどのようにクリアして遺伝子を残せたのかについてはサイエンス誌に説明が載るか(Lobyは載らないと思います)、はたまた遺伝子学者たちが頭を悩ませて新学説 or 説明をするのを待つよりほかないようです。


ちなみに、Svante Paabo(スバンテ・ペーボ)教授に率いられたマックスプランク研究所の研究チームは、この研究にあたって、クロアチアの洞窟で発見された3万8千年以上前のネアンデルタール人女性3人の化石から、骨粉400ミリグラムを採取し、そのゲノム配列を4年かかって6割再現し、現代人のゲノムと比較したそうです。
こう書くといかにも簡単そうですが、4万年近く経っている化石のゲノム比較というのは私たちが考えているより困難だそうです。それは、このネアンデルタール人化石の骨粉サンプルには長年にわたって繁殖して来たバクテリアやカビのゲノムが混じっていたほか、ネアンデルタール人のゲノムは細かく断片化して化学変化を起こしていたそうです。これらの問題を解決しながら今回、ネアンデルタール人の血(遺伝)はしっかり我々の中に生きているということを照明したわけですが、ネアンデルタール人の遺伝子を受け継いでいることについての是非はともかくとして(ちゃんと受け継いでいるんだから是も非もありませんけどね...)、いつの時代でも科学の発達、新しい事(新学説)の発表・証明って並ならぬ努力の末に達成できるものだのですね。


アンデルタール人とその生活についてはさまざま想像されているが...

neandertal-3.jpg


neandertal.jpg


我々の想像以上に文化的な面をもっていたかも知れない...

01.jpg




あしあと(18)  コメント(8) 

あしあと 18

コメント 8

y-tanaka

こうやって考えると生命には不思議な事がいっぱいですね
人間、人類って元はひとつなんですかね、ん~~~??
by y-tanaka (2010-05-22 05:20) 

ひろたん

創造以上に文化をそうかもしれませんね・・・
by ひろたん (2010-05-22 11:10) 

perseus

こんばんは。
面白い記事ですね。。。興味深く読ませていただきました。
長い歴史の中発展してきたDNAのはたらきは人知の域を
超えた非常に複雑なものでしょう。
様々な環境などの外部要因や、遺伝子レベルでの内部要因
を乗り越えて今の私たち人間がいるのでしょうから、その謎
を解明することは、そうたやすいものではないでしょうね。
by perseus (2010-05-23 00:57) 

Loby

≫ y-tanakaさん、今回のマックスプランク研究所の研究については、かなり以前から話題になっていましたが、実際にネアンデルタール人の遺伝子が私たちにも伝わっているということが証明されるとはほとんどの人が考えてなかったようです。それだけにショック(驚き)も大きいですね。


≫ひろたんさん、ネアンデルタール人は身体を塗ったり、装身具を使っていたという証拠が出てきていると最近の考古学関連ニュースは伝えています^^

≫perseusさん、ありがとうございます。人類の進化、生命の発生などは人知でもっても計り知れないところがありますね。
科学や鑑定技術などがいくら発達してもある限度以上は分からないのではないかとさえ思ってしまいます。


≫k-yanさん、ご訪問&nice!ありがとうございます。


≫momonmanonさん、ご訪問&nice!ありがとうございます。


≫Liveさん、ご訪問&nice!ありがとうございます。


≫hideyaさん、ご訪問&nice!ありがとうございます。


≫okin-02さん、ご訪問&nice!ありがとうございます。


≫xml_xslさん、ご訪問&nice!ありがとうございます。


≫enosanさん、ご訪問&nice!ありがとうございます。


≫toshiroさん、ご訪問&nice!ありがとうございます。


≫takumiさん、ご訪問&nice!ありがとうございます。
by Loby (2010-05-24 06:22) 

k-yan

暖かいコメント ありがとうございました

これからも宜しくです。
by k-yan (2010-05-24 21:15) 

chal

ご訪問ありがとうございました。アクセスするたびに、アドオンが実行されるのですが、なんでなんでしょう。なるほど、面白い記事ですね。勉強になりました、
by chal (2010-05-24 21:21) 

Loby

≫k-yanさん、ご訪問&コメントありがとうございました。
こちらこそよろしくお願いします。


≫chalさん、ご訪問ありがとうございました。
えっ、アクセスするたびにアドオンが実行される?どうしてかな~?


≫ぼんぼちぼちぼちさん、ご訪問&nice!ありがとうございました。



≫モッズパンツさん、ご訪問&nice!ありがとうございました。




by Loby (2010-05-25 04:14) 

あんず-M

いろいろ考えさせられるお話でした。なるほど。。。勉強になりました。^^
by あんず-M (2010-05-27 19:52) 

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