『インサイダー』＆『消されたヘッドライン』

　昨日は大々的に（？）"ブラジルのトップモデル"たちの画像を公開したので、今日は少しおとなしくＤＶＤ鑑賞記です。

ＤＶＤ鑑賞といっても最近の新作ではなく、以前に購入したものを再度観たわけですが、中には日本では日本未公開の秀作もあります。

どういう偶然か、ジャーナリズムものを２本続けて観ました。


まず最初は『インサイダー』（1999年 米国作品）。




マイケル・マン監督、アル・パッチーノとラッセル・クロウ主演の作品ですが、この二人が出演するということだけで、90パーセント以上の確立で見応えのある映画だと分かります。これは映画好きの人なら誰でも知っていると思いますが、パッチーノなどの有名・人気俳優は、出演する作品を選んで（良い作品にのみ）出演するので、期待はずれに終わるようなことはめったにありません。　まあ、中にはショーン・コネリ（初代ジェームズ・ボンド）のように、出演料を出すならどんな作品にでも出るという例外的な有名俳優もいますが

『インサイダー』は日本でも観られた方は多いと思いますが、実話をもとにした作品で、米国タバコ産業のを告発したTVプロデューサーと元重役を描いた、実話を基にした社会派ドラマで、たいへん見応えのある作品ですのでＤＶＤを購入しコレクションに加えるだけの価値ある作品です。

ざっとあらすじを紹介すると、CBSの人気ドキュメンタリー番組『60 Minutes』のプロデューサー、ローウェル・バーグマン(アル・パッチーノ)のもとに米国タバコ産業界の不正を告発する極秘ファイルが届けられる。ローウェルは、大手タバコ会社である、B&W社の研究開発部門副社長であったが、理由もなく一方的に解雇されたジェフリー・ワイガンド(ラッセル・クロウ)と接触し、タバコ会社が人為的にタバコに人体に有害な物質を加えているという秘密を『60 Minutes』の番組で告発するように薦める。ジェフリーは同意し、また同時に法廷で宣誓証言することを決意する。
『60 Minutes』の収録は無事終わった。しかし、ジェフェリーはB&W社と終身守秘契約をしていたため、ジェフェリーがマスコミと接触したことを知ったB&W社は、陰日向にジェフェリーとその家族に圧力と脅迫をあたえはじめる。
しかし、CBS上層部はタバコ産業との訴訟沙汰を恐れ、番組ではジェフェリーのインタヴューをカットして放映する決定を下した。さらにタバコ産業はジェフェリーの過去の過ちを暴露するアンチキャンペーンを展開。ローウェルも『60 Minutes』を降板させられた...

とこのようなものですが、最後までは書きません。関心をもった方はＤＶＤを購入するかレンタルして観てください。ちなみに、同作品はアカデミー賞の主演男優賞(ラッセル・クロウ)や監督賞など7部門にノミネートされたそうですが、残念ながら受賞はしていません（これも米国タバコ産業の圧力と考えるのは考えすぎ？）。
とにかくアカデミー賞の受賞有無にかかわらず素晴らしい作品です。

―∞―

ついで、おなじくジャーナリズム映画である『消されたヘッドライン』です。
『消されたヘッドライン』（2009年 米国/英国作品）は、英国BBで放映された全6回のTVシリーズ『ステート・オブ・プレイ～陰謀の構図～』をボーン・アイデンティティー」3部作のトニー・ギルロイら現在のハリウッドで最も人気のあるライター3人が、舞台をアメリカに置き換えて制作したリメイク作品です。




監督はケヴィン・マクドナルド、そして前述の『インサイダー』でタバコ産業を告発する役を演じたラッセル・クロウが本作では大手新聞会社の辣腕記者を演じています。また、『インサイダー』が実話をベースにした社会派ドラマであるのに対して本作はポリティカル・サスペンスとなっていますが、"似たようなことが現在米国で起こっているのでは？"と観終わったあとで思ってしまいます。

ラッセル、ヘレンとレイチェルの演技が冴える

さて、ざっとあらすじです。
ワシントンで相次いで三つの事件が起きた。ひとつはドラッグ中毒の黒人少年の射殺事件、その事件を目撃したと思われる者も瀕死の重傷を負った。　一方、良識派で気鋭の上院議員スティーヴン・コリンズ（ベン・アフレック）のもとで米国の戦争請負会社ポイントコープ社の不正追及を進めていた調査チームの責任者であったソニア・ベーカーが地下鉄で転落死したことだった。ワシントングローブ紙の辣腕記者カル・マカフリー（ラッセル・クロウ）は、この二つの事件の奇妙な関連性を発見する。
カルはリン編集長（ヘレン・ミレン）から、若手記者のデラ・フライ（レイチェル・マクアダムス）と取材チームを組み事件の調査をするように言われる。
やがて、意外にもこの二つの事件が接点を持つことがカルとデラの調査で明らかとなり、その背後に潜むアメリカ最大の政治スキャンダルの輪郭が浮かび上がってくる。しかし、ワシントン・グローブ紙の親会社（同紙を買収した投資ファンド会社）からの売上至上主義故と思われる、現場を無視した強い圧力がキャメロン編集長を介して圧し掛かることとなり、カルとデラの取材・調査活動は難渋を極め、生命の危機にもさらされるようになる...








と、あらすじを見ただけでもかなり面白い作品であることがわかりますね。
ちなみに、英国ＢＢＣのＴＶシリーズでは、石油会社とイギリス政界の癒着が描かれていますが、本作では常に海外での戦争や紛争に軍事コミットしている米国の事情に合わせて、民間戦争請負会社と米国政界の癒着が描かれています。
現在、"民間戦争請負会社"は、世界１１０ヵ国で少なくとも９０社以上が活動しており、これらは、東西冷戦後の１９９０年以降、湾岸戦争、9．11事件、各国軍隊のリストラなどを背景として、飛躍的に増えてきており、今では、"年商１０兆５，０００億円"を超える巨大ビジネスになっているというから、戦争請負会社の実情は我々の想像以上です。（参考文献）




民間戦争請負会社と米国政界がかかわるスキャンダルとしては、現実にブッシュ政権当時の米国政府と米国最大の戦争請負会社ブラックウオーター社の癒着があったと言われています。さらに、この作品で興味深いのは、新自由主義と投資ファンドに弄ばれる新聞業界の厳しい経営現状をドラマ展開に挿入していることで、前述の『インサイダー』同様、米国のマスメディアが抱えるジレンマ＆問題を浮き彫りしていることです。

ありゃりゃ、『消されたヘッドライン』に関する説明が長くなりすぎましたね...
最後にもう一つ本作品に関するエピソードを紹介します。『消されたヘッドライン』は、当初カル・マカフリー役にブラッド・ピット、スティーヴン・コリンズ役にエドワード・ノートンをキャスティングしていたが、映画制作の遅れを理由に降板。その後、マカフリー役はラッセル・クロウに、コリンズ役はベン・アフレックに変更されたといういわくつきの映画だそうですが、オリジナル・キャスティング通りでもかなり興味深い作品となったでしょうね。でも、ラッセル・クロウがこの映画で演じた中年過ぎの太ったオヤジ記者なんて役をピットがやったらイメージダウンになるかも？


以下は全て戦争請負会社ブラックウオーター関連の写真です。
こちらは映画のようなフィクションでなく実物なので、不気味な感じがします...

ブラックウオーターのグリズリーズ本部

アフガニスタンでもブラックウオーターは活動している

コメント 1

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by Loby (2010-04-23 21:31)